国連大学キリンフェローシップ卒業生

デデさん(Adawiyah Dede)インドネシア出身

研究テーマ 湿熱処理がアレンガおよびサゴ澱粉の物理的性質に及ぼす影響

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インドネシアに広く分布する、いずれもヤシ科の植物であるアレンガとサゴの澱粉について研究しています。サゴ澱粉は工業的に利用され日本にも輸入されており、うどんの打ち粉などに使われていますが、アレンガについては、現地では伝統的に、主にめん類やお菓子に使われているものの、研究がなされていません。このふたつの物理的特性を比較研究し、食品加工への応用に役立つ情報を得ることを目指します。化学薬品を使わずに澱粉を最適に改質する技術も試みています。

私は研究者であると同時に農業大学の食品科学技術学部で講師もしています。アドバイザーの神山さんからは、技術的な指導や新規な知識を得るとともに、マネージメントについても学んで帰りたいと思っています。

スリラマさん(Yadahally Nareppa Sreerama)インド出身

研究テーマ 豆類の機能性成分の探索と作用機構に関する研究

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豆類に含まれるファイトケミカルの探索を行っています。ファイトケミカルは植物に含まれる有用成分で、生活習慣病などへの効果が注目を浴びています。豆類では大豆に含まれるイソフラボンが有名です。インドでは緑豆(ムングビーン)が広く流通していますが、通常、豆の皮は除去され家畜の飼料になるか廃棄されます。ですから、皮からファイトケミカルを発見、抽出できないかと探っています。日本の小豆の可能性も探してみたいですね。

来日した日、すべての研究環境が整えられ、私を受け入れる準備が万端に整えられていたことに感動しました。皆さんのサポートのおかげで、研究に集中、専念できています。

ジャーンさん(Zhang Xiao-Feng)中国出身

研究テーマ ニンニクなどネギ科植物の脂質代謝等に及ぼす成分に関する研究

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中国でも生活習慣病が深刻化してきています。特定の野菜にわずかに含まれる活性物質を見つけ出し、将来的には、生活習慣病予防に役立つサプリメントや機能性食品の開発に役立てることを目指しています。現在はネギ科を中心に探索中ですが、中国にはさまざまな野菜があるので、最も可能性の高いものを発見したいです。有用な成分が明確になれば、その成分を多くする栽培法を確立することも実現可能になるかもしれません。

ほかの研究員と協力し合えることも、このプログラムの魅力です。最初は中国からの研究員がもう一人いることが心強かったですが、今ではほかの国の人たちともすっかり打ち解けました。

ジンさん(Zhang Jinxiang)中国出身

研究テーマ 遊離糖を原料とした糖鎖の酵素合成

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酵素をテーマにした基礎研究で、人の健康に有用な新たな酵素の発見を目指しています。容易なことではなく、多くの忍耐を要する研究分野ですが、最新の設備を利用しながら研究者として必要な技術を学ぶことができる充実した毎日です。つくばには一流の研究所がそこかしこにあり、アカデミックな雰囲気が漂っています。ここでの環境は私にとって刺激的ですし、日本の文化に触れ、人と交流できる機会を与えられたことにも感謝しています。

中国で、先輩研究者がこのフェローシッププログラムで来日した経験があり、「このプログラムはとても素晴らしい」と私に薦めてくれました。教えてもらえてとても幸運でした。

ジョイさん(Sukatta Udomlak)タイ出身

研究テーマ タイ産熱帯果実およびその加工副産物由来のエキスに含まれる機能性成分に関する研究

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タイを代表する果物であるマンゴスチンの果皮に含まれる機能性成分の研究を行っています。人の健康のために有用な機能性成分を効率よく抽出できれば、その付加価値で果物としての市場価値が上がり、栽培農家の収入向上にも貢献できます。マンゴスチンのような果物のほか、野菜、ハーブ類など、タイで豊富に収穫される農産物にも対象をひろげて研究を続け、いずれは人々の健康に役立つ製品の開発につなげていきたいです。

このプログラムを通して、アドバイザーや研究者仲間と出会えたことは大きな財産です。最先端の設備や機器を利用しての研究はもちろん、ここでの生活も楽しんでいます。

5人のフェローシップ研究員に聞いてみました

Q
来日して研究をスタートしてから、どんなことが印象に残っていますか。
A

研究所に最先端の設備が整っていることはもちろんですが、サポートしてくれるアドバイザーやスタッフの皆さんがそれ以上に素晴らしいと感じています。私たちが不安なく研究に専念できる環境をつくってくれていることに、とても感謝しています。

Q
研究員同士で協力し合っていることがあれば教えてください。
A

5人はプライベートでもとても仲が良いので、いっしょに過ごすことが多いんです。全員が食品総合研究所の隣にあるゲストハウスで暮らしているため、いっしょに食事の準備をしたり、誰かの作った料理を味見したりも楽しいです。休日には筑波山に登ったり、地元のお祭りや花火に行ったり、秋葉原に出かけたこともあります。ラマさん(インド出身のヤダハリさん)がリーダー的存在で、楽しげな提案を次々としてくれるんです。

Q
5人で同じ時期に同じ研究所内で研究を行うことの利点はありますか。
A

国連大学キリンフェローシップの素晴らしいとこは、研究への助成をしてくれるのみではなく、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ5人が交流でき、また、日本の地で、共に文化を学び成長できるところです。体験を共有できる仲間がいることはとても重要で、おかげでホームシックになる人もいません。京都やディズニーランドへの旅行も予定されており、全員がとても楽しみにしています!

Q
将来、5人でいっしょに実現したいことはありますか。
A

まずは日本での滞在の中でそれぞれの研究において最大限の成果を得ることです。お互いに刺激し合い、切磋琢磨できればと思います。帰国後は、ここで築いた家族のような関係を大切にして交流を続け、いずれいっしょに協力し合って何かしらの研究結果を生み出していけたら最高ですね。

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