オオルリシジミの幼虫の食草クララを椀子ヴィンヤードで増やす活動を麓の塩川小学校とアースウォッチとで行っています。
- 環境
2021年10月12日
2019年から、国際NGOアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さんと、絶滅危惧種(環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠA類(CR)、長野県で絶滅危惧ⅠB類(EN)のチョウであるオオルリシジミの幼虫の唯一の食草であるクララを増やし、長野県上田市陣場台地にある椀子ヴィンヤードに植える活動を行っています。
キリングループでは、2014年からシャトー・メルシャンのブドウ畑の生態系調査を農研機構との共同研究で行い、日本ワインのために遊休荒廃地を草生栽培のブドウ畑にすることが、貴重で広大な草原を創出し、豊かな里地里山の環境を広げ守ることにつながっていることを解明しました。
2016年からは、農研機構の先生の指導の下で従業員参加による希少種・在来種の再生活動を開始しています。今回のクララを増やす活動も、これらの活動の一環として実施しています。
取り組みとしては、椀子ヴィンヤードの近くの田のあぜに生えているクララの先端を田の所有者に許可を得て切り取り、挿し木にして育てるというものです。
しかし、色々と調査をしてもクララを挿し木で育種した例は殆どなく、2019年初夏にボランティアの皆さんで挿し穂を取り、持ち帰った苗は残念ながらすべて枯れてしまいました。
自動潅水器のある農研機構の研究所でも挿し穂が根付かずに枯れてしまったものがありましたが、生き残った苗を再度ボランティアの皆さんに配布して再挑戦をしました。
本来は、1年間育苗してから椀子ヴィンヤードに植え付ける予定でしたが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止に。結局2年後の2021年のゴールデンウイーク直後に植え付けを行いました。
ボランティアの皆さんが育てたクララの苗は2年で大きく成長し、ボランティアの自宅から椀子ヴィンヤードへ運ぶのにも苦労をした方もおられましたが、無事、椀子ヴィンヤードの再生場所に植え付けられ、元気に育ちつつあります。
2021年からは、椀子ヴィンヤードの麓にある塩川小学校の皆さんにもクララの育種に参加いただくことになりました。
これは、2019年12月5日にキリングループと上田市で締結した、「ワイン産業振興を軸にした地域活性化に関する包括連携協定」の取組の1つとして行っている取組です。
2021年9月3日に、塩川小学校で環境教室とクララの植樹を行いました。農研機構の先生に来校して対応をいただく予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、急遽すべてをオンラインでの実施となりました。
環境教室の先生を務めたのは、シャトー・メルシャンのヴィンヤードで共同研究として生態系調査に携わる、国立研究開発法人農研機構上級研究員(博士)の楠本良延先生。香川県の研究所から、長野県上田市を結んでのオンライン授業です。
今回の環境教室のテーマは、椀子ヴィンヤードの生物多様性について。
垣根栽培のヴィンヤードが貴重な草原環境になっていることや、植物回復の活動の結果、定着している植物の種類が増えてきていることを学んでもらいました。
オンラインという環境下でも、生徒さんたちは興味深そうに参加してくれました。
授業の後は、校庭にある花壇に、今年挿し穂を取り研究所で苗にまで育てたクララの植樹を行いました。
この苗たちは1年間花壇で育てられた後、椀子ワイナリー周辺のヴィンヤードへの植え付けが予定されています。
いつかオオルリシジミの姿を見られる日を夢見ながら、植え付けを行ってもらいました。
最後のまとめの時間には、生徒さんたちは、「自然について知らないことを学べて面白かった」「クララという植物について学んだので、植え付けも楽しかった」など様々な感想を積極的にお話ししてくれました。
「日本を世界の銘醸地に」
シャトー・メルシャンが、日本でしか作りえない最高のワインづくりを追求する中で、大切にしているものの一つがヴィンヤードの自然環境。
その多様性を地域の子どもたちに知ってもらうことで、貴重な自然環境を未来へとつないでいこうとしています。
尚、クララの育種には、今回も国際NGOアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さんにも参加いただきます。前回の反省と得られた知見をもとに、最適なタイミングで挿し穂を取ったクララは非常に元気です。来年のブドウ畑への植え付けが楽しみです。
※所属(内容)は掲載当時のものになります。