オオルリシジミの幼虫の食草クララを椀子ヴィンヤードで増やす活動を行いました。
- 環境
2022年06月20日
2019年から、国際NGOアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さんと行っているクララを増やす活動を、今回は椀子ヴィンヤードのある陣場台地麓の塩川小学校の皆さんとも実施しました。
クララは、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠA類(CR)、長野県のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類(EN)のチョウであるオオルリシジミの幼虫の唯一の食草です。この活動は、椀子ヴィンヤードの近くの田のあぜに生えているクララの先端を所有者の許可を得て切り取り、ブドウ畑の共同研究を行っている農研機構の指導の下で挿し木にして育て、椀子ヴィンヤードに返して増やす活動です。いつかオオルリシジミが飛ぶブドウ畑になることを願って、今回で2回目の活動になります。
2021年初夏に採った挿し穂を、アースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さんに加えて、麓の塩川小学校の皆さんに育てていただきました。
21年5月に採った刺し穂は、農研機構の研究所で小さな苗にまで一旦育て、植え付けが可能になった8月末にポット苗にしてボランティアの自宅や小学校に送りました。塩川小学校では、校庭の花壇に植え付けて、育てていただきました。
ちょうど、新型コロナウイルス感染が拡大していた時期ということもあり、現地に行っての指導は断念。小学校と四国の農研機構の研究室、キリンの担当者の自宅をZOOMで結び、校庭の様子を動画で見ながら指導するという初の試みで実施しました。
2021年8月末に、オンラインで指導を受けながら花壇にクララを植え付けました
1年後の2022年5月28日には、塩川小学校の皆さんとともに育ったクララの植え付けを行いました。30苗を花壇に植え付け、冬を超えて芽を出したのは15苗。どれも大きく元気に育っていました。
当日の午前中は大雨の予想。実施できるかどうか危ぶまれましたが、花壇からクララの苗を取り出すために校庭に出た時には雨も止み、無事に苗をポットに移す作業ができました。
1年育てたクララを花壇からポットに移します
小学校からはバスで移動。
椀子ヴィンヤードでの植え付けも、楽しく終えることが出来ました。
生徒の皆さんで椀子ヴィンヤードの再生場所に植え付けました
明くる5月28日には、アースウォッチ・ジャパンのボランティアの皆さんが育てた苗の植え付けを行いました。12名に挑戦をしていただき、春に芽がでたのは4苗でした。クララを増やす活動は過去の実施例も乏しく中々うまくいかない部分もありますが、ノウハウを蓄積して、今後多くの方が参加できるようにしていきたいと考えています。
ボランティアの皆さんで椀子ヴィンヤードの再生場所に植え付けました
午前中に再生場所にクララを植え付けた後は、毎年行っているスミレの分布調査に参加していただきました。スミレはアリ散布※という珍しい方法で広がっていきます。スミレが増えていくことは、ブドウ畑がより良質の草原になっていくことを示します。
スミレ調査
夕方には、近くの田のあぜで来年に向けたクララの刺し穂採りを行いました。8月~9月頃まで農研機構の研究室で育苗した後、また皆さんに配布し、1年間育てていただく予定です。
左:クララの刺し穂採り、右:農研機構研究所での育種状況
メルシャンは、「日本を世界の銘醸地に」というビジョンを掲げています。高品質なブドウを持続的に確保し、世界で通用する品質のワインを安定的に産出する目的で、2003年長野県上田市に自社管理畑椀子ヴィンヤードを開場しました。2014からは、遊休荒廃地をブドウ畑にしていくことの環境影響を確認するために、農研機構との共同研究により生態系調査を開始し、レッドリストに載る希少種を含む多様な昆虫や植物が見つかりました。この共同研究で、遊休荒廃地を日本ワインのためのブドウ畑にすることが、下草を生やす草生栽培と適切な下草刈りによって良質で広大な草原を創出し、生態系を豊かにすることが分かりました。クララを増やす活動に加えて、希少種・在来種の再生活動も実施しています。
- アリ散布:スミレの種子の根元にはエライオソームと呼ばれる独特の器官があり、アリはここから出る匂いに誘われて自分たちの巣に持ち帰ります。アリはエライオソームだけを取り出し、不要な種を巣の外に捨ててしまい、スミレはそこから芽を出します。このようにして、アリに種を運んでもらい生息地を広げていくことをアリ散布と呼びます。
※所属(内容)は掲載当時のものになります。