オオルリシジミの幼虫の食草クララをシャトー・メルシャン椀子ヴィンヤードで増やす活動を行いました。

  • 環境

2023年06月23日

  • 塩川小学校の皆さま

  • アースウォッチ・ジャパンのボランティアの皆さま

2018年から、国際NGOアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さまと行っているクララを増やす活動を、昨年、一昨年に続き今年も椀子ヴィンヤードのある長野県上田市丸子地区陣場台地麓の塩川小学校の小学生とともに実施しました。
クララは、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠA類(CR)、長野県のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類(EN)のチョウであるオオルリシジミの幼虫の唯一の食草です。この活動は、椀子ヴィンヤードの近くの田のあぜに生えているクララの先端を所有者の許可を得て切り取り、挿し木で苗に育てた後、ブドウ畑の共同研究を行っている農研機構の指導の下で、校庭で育て、1年後に椀子ヴィンヤードに返して増やす活動です。いつかオオルリシジミが飛ぶブドウ畑になることを願って活動を継続しています。

昨年5月末は、大雨の予想される中での作業でしたが、今年はうす曇りながらも作業に適した天候でした。塩川小学校の教室で「研究所で育てた苗木のお話」、「クララを守り育てる意味」など農研機構の先生から授業を受けた後に、小学生とともに育ったクララの苗を校庭から掘り出します。その後、椀子ヴィンヤードに移動し、再生場所に植え替えを行いました。今年はクララが大きく育ち、一番大きいものは小学生の腰から頭まであるものもありました。

塩川小学校でクララの苗を校庭から掘り出しました

小学校からはバスで移動。
椀子ヴィンヤードでの植え付けも、楽しく終えることが出来ました。

小学生とともに椀子ヴィンヤードの再生場所にクララを植え付けました

午後には、メディアや機関投資家の皆さまを対象とした環境ツアーを行いました。
この地で日本ワイン造りを進める過程において、垣根式・草生栽培でブドウ畑を広げ、育ててきたことが30ヘクタールという規模の広大な草原を創生していたことが農研機構との共同研究で明らかになりました。この話自体は、環境報告書やシンポジウムの講演などを通じて、話としては聞いたことのある方も多かったと思いますが、改めて実際のヴィンヤードの中で、ブドウ栽培の農作業の一環として下草を刈ることが草原環境の創生に寄与していることを目で見て現地で体感いただきました。参加者には、事業として農産物を生産することで生態系を豊かにする貴重な「ネイチャー・ポジティブ」の事例として、好意的に受け止めていただけたと考えています。ワイン好きのメディアや投資家の皆さまから、ブドウ品種や生育環境のご質問もたくさんいただきました。

翌5月27日(土)には、アースウォッチ・ジャパンのボランティアの皆さまが育てたクララの苗の植え付けを行いました。昨年は12名の挑戦に対し、苗育成に成功し春に芽が出たのは4名でしたが、今年は残念ながら1名。その苗は、勤務されている学校の屋上緑化の畑で育てたものでした。クララの生育は環境に左右されるため、屋内よりもベランダなど風通しの良い場所の方が比較的うまく育つのではないか、という知見を得たと考えています。
昨年、ボランティアの皆さまが1年間育てた後に植え付けたクララが、今年は非常に大きく育っていることを確認し、ボランティアの皆さまの歓喜の声も聞こえてきました。
また、今年は、繁殖力が強く、地域の自然環境や生物多様性を脅かすおそれが強いとして環境省から侵略的外来種として指定されているブタクサの駆除をおこないました。生態系がますます豊かになることを願って行った作業でしたが、たくさんの草が生えている中でブタクサを見つけることが面白く、皆さまにはこの作業も楽しい活動となりました。

ボランティアの皆さまで椀子ヴィンヤードの再生場所に植え付けました

午前中に再生場所にクララを植え付けた後は、毎年行っているスミレの分布調査に参加いただきました。スミレはアリ散布※という珍しい方法で広がっていきます。スミレが増えていくことは、ブドウ畑がより良質の草原になっていくことを示します。
ブドウの樹が生えている1列を複数名の目で確認しながら、しらみつぶしにスミレを確認していきます。1列で20数件の分布確認ができるところもあれば、1件しかないところもありました。「アリの動きはこんな感じだったのだね」と話しながらの時間も楽しみました。その活動の中で、なんとブドウ畑の畝の中でひばりの卵も見つけました。

スミレの分布調査

夕方には、近くの田の畔で来年に向けたクララの挿し穂採りを行いました。8月~9月頃まで農研機構の研究室で育苗した後、またボランティアの皆さまに配布し、1年間育てていただく予定です。

クララの挿し穂採り

シャトー・メルシャンは、「日本を世界の銘醸地に」というビジョンのもとで、世界で通用する品質のワインを安定的に産出することを目指し、高品質なブドウを持続的に確保するために自社管理畑を拡大、2003年シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤードを開場しました。2014年からは、遊休荒廃地をブドウ畑にしていくことの環境影響を確認するために、農研機構との共同研究により生態系調査を開始し、レッドリストに載る希少種を含む多様な昆虫や植物が見つかりました。この共同研究で、遊休荒廃地を日本ワインのためのブドウ畑にすることが、下草を生やす草生栽培と適切な下草刈りによって良質で広大な草原を創出し、生態系を豊かにすることが分かりました。クララを増やす活動に加えて、希少種・在来種の再生活動も実施しています。

  • アリ散布:スミレの種子の根元にはエライオソームと呼ばれる独特の器官があり、アリはここから出る匂いに誘われて自分たちの巣に持ち帰ります。アリはエライオソームだけを取り出し、不要な種を巣の外に捨ててしまい、スミレはそこから芽を出します。このようにして、アリに種を運んでもらい生息地を広げていくことをアリ散布と呼びます。

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

価値創造モデル

私たちキリングループは、新しい価値の創造を通じて社会課題を解決し、
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持続的に循環することで事業成長と社会への価値提供が増幅していく構造を示しています。
この循環をより発展させ続けることで、お客様の幸せに貢献したいと考えています。