環境関連のエンゲージメント

ステークホルダーエンゲージメント

キリングループは、社会と共に持続的に成長していくために、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」において、CSV(CreatingShared Value)を経営の根幹に位置付けています。
CSV経営とは、社会課題の解決とお客様への価値提供を両立し、社会と共に持続的な成長を目指すことです。これを実現するためには、多様なステークホルダーの課題や期待、要請を把握・理解することが重要です。
キリングループでは、事業に関わるさまざまなステークホルダーとの対話を実施し、協働するとともに、政策提言につながる自主的な活動にも参画しています。

ステークホルダーエンゲージメント

 

廃棄プラスチック問題を解決するための活動にあたって(2023年9月)

キリングループは廃棄プラスチック問題の解決に向け、廃棄プラスチックを極小化し、循環型社会を実現する解決策の提案や活動支援を行っているAlliance to End Plastic Waste(AEPW)に参画しています。世界的な非営利団体である同アライアンスのメンバーには、プラスチックのバリューチェーンに関わる70社以上の企業と、地域社会、市民団体、政府間組織、政府機関をが世界各国から参画しています。今回AEPWのプラスチック循環社会に関するサミットが東京で開催されたことから、キリンビール横浜工場へAEPWメンバーにお越しいただきキリングループのプラスチック循環に関する考え方やこれまでの取り組みを発表し、意見交換を行いました。

当日の内容

1 キリングループのプラスチックに関する取り組みの説明

キリングループのCSV経営への取り組みと環境への統合的アプローチを説明
容器包装に関する事例、主にケミカルリサイクルへの取り組みを説明
上記取り組みへのステークホルダーや外部団体からの意見を共有
パッケージイノベーション研究所の紹介と開発パッケージの紹介

2 意見交換
1 AEPWアライアンスメンバーの皆様からのご質問・ご意見
  1. ケミカルリサイクルが既存のメカニカルリサイクルの取り組みと背反するのではないか
  2. ケミカルリサイクルのメカニカルリサイクルに対するコストについてはどの程度であるのか
  3. ケミカルリサイクルは技術そのものを独自に開発しているのか、そうであればライセンス契約などを実施するのか
2 いただいたご質問・ご意見を踏まえた回答
  1. ケミカルリサイクルはメカニカルリサイクルを否定するものではなく、混合して運用していくことが重要であると考えている、特に日本ではPETボトル回収率が90%以上あり混合運用が重要
    加えてメカニカルで使用できない廃プラスチックも活用できるところに革新性がある、そのためメカニカルリサイクル事業者からの反発やネガな反応は現状ではない。
  2. 現状ではコストが高い、ただしこれはまだまだ規模が小さいためであるととらえている、2027年までにはメカニカルリサイクルと同程度のコストを目指すために我々自身の手でもケミカルリサイクルの工場を立ち上げ、規模を拡大していくことでよりよいプラスチック循環社会を実現していくことである
  3. 独自開発ではなく、既に実用化している事業者も存在している、よってライセンスそのものも保持しているわけではない
    重要なことは、我々がケミカルリサイクルを推進していくことでこれまで廃棄されてしまっていたメカニカルリサイクルに適さない廃プラスチックを供給するサプライヤーを広げていくことである

これらの意見交換内容については、キリングループ内のグループ環境会議等でも課題として取り上げており、今後も継続して前向きに取り組んで参ります。

3 その他

当日はAEPWとの意見交換に加えて、メディアの皆様ともAEPWとアライアンスメンバーとしての当社の取り組みについて意見交換を行いました。内容は以下の通りです。

  1. AEPWのご紹介、AEPWの国際NPOとしての役割
  2. プラスチック資源循環推進における期待される企業および消費者の役割
  3. プラスチック資源循環の実現に向けた課題
  4. プラスチックバリューチェーン全体での連携の必要性
  5. 日本における課題

紅茶農園とのエンゲージメント

2013年から開始したスリランカ紅茶農園へのレインフォレスト・アライアンス認証取得支援では、毎年現地に赴き、企業側と現地生産側でニーズや課題を共有できる貴重な機会の場としてプランテーションのマネージャーたちや地域の方々との意見交換を行っています。
2018年から開始した認証取得支援の小農園への拡大は、自社農園で生産した茶葉だけでは足りず小農園の茶葉に多く依存している大規模農園のマネージャーたちからの相談がきっかけとなっています。
農園内の水源地保全活動も、気候変動による水資源への影響を強く懸念していた大規模農園のマネージャーや地域の方々との対話の中で具体化したものです。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大期間を除く。

日本ワインのためのブドウ生産地とのエンゲージメント

椀子ヴィンヤードの生態系調査では、国際NGOアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの方々にも協力をいただいています。
2018年には、椀子ヴィンヤードのある陣場台地に広がる水田の畔を対象として絶滅危惧種であるオオルリシジミの幼虫の唯一の食草であるクララの分布地図作製に協力をいただきました。その調査結果を利用し、2019年からはクララを増やす活動を行っています。作成した分布地図も参考にしながらクララを特定し、田の所有者の許可の下でクララの先端を挿し穂として採り、ボランティアが自宅で挿し木にして育て、しっかりした苗に育ったら椀子ヴィンヤードに植え付けることで増やす、という活動を行っています。2021年には、クララの挿し穂取りに椀子ヴィンヤード麓の塩川小学校の先生方に参加していただき、取った刺し穂は小学校の校庭の花壇で育て、2022年5月末には育った苗を小学生の皆さんで椀子ヴィンヤードに植え付けを行いました。これらの活動は、2022年以降も継続しています。

次世代エンゲージメント

キリングループは「環境ビジョン2050」のもと、グループの枠を超え次の世代も巻き込んで環境課題を解決し、社会にポジティブなインパクトを与えていくために、さまざまな形で次世代とのエンゲージメントを推進しています。

キリン・スクール・チャレンジ

キリングループは、次世代を担う中高生が世界のさまざまな社会的課題の解決に向けて学び、考え、議論して同世代に伝える「キリン・スクール・チャレンジ」を2014年から開催しています。
持続可能な農業・林業・容器包装をテーマに集合形式で開催し、同世代に訴えかけたいことを写真やスケッチブック・リレーなどの手法で表現し、SNSへ投稿することをワークショップのアウトプットとしています。

全国ユース環境ネットワーク

キリングループは、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金が主催する「全国ユース環境ネットワーク」を、2013年から(前身である「全国高校生エコ・アクション・プロジェクト」の時から)支援しています。
「全国ユース環境ネットワーク」では、日頃から環境活動に取り組む高校生の活動事例を全国から募り、選考を得た上で選ばれた高校生たちが地方大会を経て、全国大会に出場します。高校生たちの環境活動は、それぞれ地域の問題を反映したものが多く、次世代を担う若い世代の課題認識を理解する貴重な場となっています。
支援活動の一環として年に1回、高校生の企業訪問を受け入れています。これまで、中野本社をはじめ、横浜のパッケージイノベーション研究所や中央研究所、椀子ヴィンヤードやキリンも出資している遠野の農業法人のBEER EXPERIENCEを訪問し、実際の研究現場、生産現場を見てもらいながら、意見交換を行っています。

  • キリンスクールチャレンジ表彰式

  • 全国ユース環境ネットワーク全国大会

環境マークプログラム

2019年からは、一般社団法人地球温暖化防止全国ネットと共に、「環境マーク」を子どもたちが力を合わせて探す「環境マークプログラム」の試行を開始しています。
2020年からは、より継続的にプログラムを実施できるように「かんきょうマークはっけん手帳」を使ったプログラムを開発して展開しています。子どもたちが環境マークを探し見つけてくると、実施団体の指導者が確認し、「かんきょうマークはっけん手帳」にキリンの「エコパンダシール」を貼ることによりモチベーションアップを図る仕組みになっています。

SDGs副教材の無償配布

キリングループは、小学生向けSDGs副教材「SDGsスタートブック」の「SDGsの目標2:飢餓をゼロに・持続可能な農業」の制作に協力しています。主に小学生を対象に持続可能な社会の創り手を育むプロジェクト「EduTown SDGsアライアンス」が企画したものに協力して制作されたものです。2021年度以降は、30万冊を無償配布しています。

  • かんきょうマークはっけん手帳

  • SDGsスタートブック

専門家とのエンゲージメント

キリングループでは、従来からも有識者やNGOとのエンゲージメントを重視し、社会課題の把握と進むべき方向の確認を行ってきました。2015年のCOP21でのパリ協定採択、国連でのSDGs採択、2017年のTCFD最終提言の公表を受けて、専門家やNGO、ESG投資家とのエンゲージメントは益々重要性が増してきていると考えています。

有識者

2020年2月10日に発表した「キリングループ環境ビジョン2050」の策定にあたっては、過去からも貴重なアドバイスをいただいてきた有識者の皆さまのご協力を得て、ステークホルダーダイアログを開催し、得られた多くの貴重な意見をビジョン策定に反映させました。

農研機構

遊休荒廃地をブドウ畑に転換していく過程についての生態系調査では、毎年一回、共同研究を行っている国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)の専門家に共同研究報告会を実施していただき、得られた知見を共有するとともに、今後の進め方について議論を行っています。

ガイドライン策定

キリングループは、各種のガイドライン策定にも積極的に委員を派遣しています。2018年~2019年に掛けては、環境省の依頼を受けて「環境報告ガイドライン・環境会計ガイドラインに関する検討会」「環境報告ガイドライン2018年版 解説書等作成に向けた検討会」に委員を出し、専門家と環境情報の開示に向けた検討を行いました。
2020年は、一般財団法人食品産業センターの依頼を受けて、食品産業分野を対象とした「TCFD業種別ガイダンス検討委員会」にも委員を派遣しました。2021年からは経済産業省の非財務情報の開示指針研究会にキリンホールディングスのCSV戦略担当役員が要請に応じて参加しました。その他、2022年、2023年も省庁が主催するさまざまな検討会に参加しています。

SBTNコーポレートエンゲージメントプログラム

キリングループは、2021年2月に、Science Based Targets Networkが主催するコーポレートエンゲージメントプログラムに国内医薬品・食品業界として初めて参画し、企業の自然資本利用(淡水、陸、海洋、資源利用、気候変動、汚染、外来種)に関する目標を設定するための科学的なアプローチの開発に協力しています。

The TNFD Forum

2021年12月からは、自然資本に関するリスクについて企業が報告し行動するための、リスク管理に向けた情報開示の枠組みである自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のミッションとビジョンを共有するためのサポーターネットワーク“The TNFD Forum”に、国内食品飲料・医薬品企業として初めて参画しています。

投資家とのエンゲージメント

機関投資家向けに「KIRIN CSV Day」を毎年開催し、CSV経営の進捗報告を行っています。2023年は、容器包装に関する取り組みの紹介と、パッケージイノベーション研究所を擁するキリンの強みを中心に説明しました。

CDP・TNFDとの対話

2017年からは、CDPの会長やCEOが日本を訪問される機会を捉えて、キリンホールディングスのCSV戦略担当役員との対話の機会を作り、気候変動への対応についての意見交換を行っています。
2022年にはTNFDエグゼクティブディレクターの訪問を受け、キリングループの自然資本の取り組みを共有するとともに、TNFD開示フレームワークβ版に対する意見交換を行いました。

  • CDP会長ポール・ディキソン氏。CDPCEOポール・シンプソン氏。TNFD事務局長トニー・ゴールドナー氏

政策提言につながる自主的な参画

「政策提言につながる自主的な参画」は、環境報告書2024年度版の「資料編」P101~P102で開示しています。