人事担当執行役員 三好 俊也
キリングループの持続的な成長を支えるもっとも大切な経営資源は、無限の可能性を持つ「人材」です。キリングループでは、従業員と会社はイコール・パートナーであるという考えのもと、仕事を通じて自らを高めようという成長意欲旺盛な従業員(=自律した個)に対して、その個性を尊重し、さらなる活躍・成長のステージを提供しています。
「新キリン・グループ・ビジョン2021」(新KV2021)では、「社会課題に向き合い、お客様を理解して、新しい価値を創造すること」を目指しています。新KV2021を実現するためには、人材の多様性を高め、お互いに違いを受容し、それぞれの強みを最大限に活かす組織づくりが重要です。
多様な従業員がいきいきと働き、キリンにしかできない商品・サービスを創造し、お客様に感動・驚きを届け続けるために、「人材育成」「多様性の推進」「ワーク・ライフ・バランスの実現」に取り組んでいます。
キリングループでは、価値創造の源泉である「人材力」を高めることが重要であるとの認識のもと、「人間性の尊重」を人事の基本理念に据えて、人材育成に継続して取り組んでいます。経営環境が厳しく、変革が求められる時代において企業競争力を強化するためには、将来のグループの発展を牽引する人材、成長戦略につながる価値創造を実現できる人材を一人でも多く輩出していかなければなりません。
キリングループでは、「人は仕事を通じて成長する」を人材育成の基本的な考え方として、「経営変革を実現するため、一人ひとりが主体的・意欲的に自己成長を目指す」という人材育成方針を定め、下の3つの重点課題に取り組んでいます。
【キリン経営スクール】
キリン経営スクールは、45歳未満の経営職(管理職)を対象に8か月にわたって行われる全8回のキリンオリジナルの育成プログラムです。このプログラムは、講義とケーススタディを通じて戦略論等の経営知識を身につけるにとどまらず、その知識を現場の経営で応用可能な状態にし、更には実際に経営改革の先頭に立てる人材の育成を目的としています。
現在、キリングループではグローバルな拠点で約4万人の従業員が働いており、多様な人材の強みを最大限に引き出すことで組織能力を高めること=人材力×組織風土を、主要な経営課題として位置付けています。「新キリン・グループ・ビジョン2021」(新KV2021)では、グローバルな事業フィールドでキリングループの事業に関わる人材が、お互いを受け入れ、強みに変えていく企業文化を目指し、多様性推進室を中心に性別、障がいの有無、年齢、国籍に関係なく、成長意欲を持つ多様な人材が活き活きと働き、仕事を通じて成長を実現できる組織風土・場づくりに取り組んでいます。
キリンホールディングスは、女性を含め多様な視点を企業の強みとし、お客様への新たな商品や価値の創出につなげていることが評価され、2013年、経済産業省が主催する「ダイバーシティ経営※企業100選」に選ばれました。
キリングループでは、2006年10月に「キリン版ポジティブアクション」を制定し、翌年に女性の活躍とネットワークづくりを積極的に支援するための社内組織「キリンウィメンズネットワーク(略称:KWN)」を発足させ、会社として女性活躍の機会・環境を整備するトップダウンの取り組み、女性の自己成長やキャリアを支援するボトムアップの取り組みの両輪で活動を継続しています。
近年では、2013年に策定した「キリングループ女性活躍推進計画(KWN2021:キリン・ウィメンズネットワーク2021)」に基づく計画的な育成、配置により女性の職域拡大や登用も進み、執行役員、国内・海外グループ会社の社長、工場長(キリンビール)、支社長(キリンビールマーケティング)、部長(キリン(株))が誕生しています。
今後も、結婚や出産などのライフイベントを乗り越えて女性が活躍するために必要な制度や仕組みづくり、女性が更に仕事にやりがいを持ち、自己成長し続けることへの意識を促すためのキャリア支援やリーダー育成研修等に、継続して取り組んでいきます。
女性活躍推進長期計画「KWN2021」
2021年時点での女性リーダー数を2013年の3倍(300人、女性リーダー比率12%)に拡大することを目標に定め、「ありたい姿」を実現する組織風土の構築に取り組む
協和発酵キリンでは、多様な社員の活躍を支援するため、2010年よりDiversity & Inclusionプロジェクトを発足し、
全社横断的なワーキングチームを結成して様々な課題に取り組んできました。2013年7月からは、これらの課題に継続的に取り組むため、人事部門に「多様性推進グループ」を設置し、制度の充実や環境整備を推進しています。
また、従業員全員が共通の思いを共有することも大切だと考え、協和発酵キリン設立時に作成した「私たちの志※」の浸透を推進し、2014~2015年に「私たちの志」をテーマにしたビデオコンテストを開催しました。
※ http://www.kyowa-kirin.co.jp/about_us/commitment_to_life/
積極的に事業のグローバル化を推進するキリングループでは、各国グループ会社がお互いを知り、グローバルでの連携を強めるため、「短期人材交流プログラム」をはじめとして、様々な部門間での国際人材交流やベストプラクティスの共有が行われています。
また、グループ経営人材育成の一環として、グローバル経営視点と高い経営能力を備えた次世代リーダーを育成する「グローバルプログラム」が体系化・展開されています。
多様な従業員が、お互いの人権を認め合い、活き活きと働くことができる組織風土づくりの取り組みとして、毎年、全従業員を対象とした人権研修およびグループ会社の社長・役員を対象とした経営層向けの人権研修を実施し、役員・従業員に人権尊重の考え方を徹底しています。直近の人権研修では、性的少数者(LGBT)への理解をテーマにするなど、社会的に関心の高いテーマも取り上げています。
また、グループ会社ごとに人権啓発担当を設置し、研究会や担当者研修を行うことでグループ全体の人権意識の向上に努めています。これらの施策の振り返りとして、人権に関する意識調査を毎年実施し、この調査結果から各社の従業員の意識の変化および解決すべき課題を把握し、その後の取り組みに役立てています。
従業員一人ひとりが自主性・創造性を発揮し、仕事への誇りとやりがいを持って働くために、ワーク・ライフ・バランスは、重要なテーマです。キリングループでは、2010年4月にグループとしての「ワーク・ライフ・バランス憲章」を定めました。
適正な労働時間管理、残業削減など基本的な施策に継続的に取り組み、ワーク・ライフ・バランスの基盤となる環境を整備していくことに加え、男女問わず、全ての従業員が、仕事と生活のバランスが取れた働き方ができるよう、各種の制度を整備しています。
今後もグループ各社への制度の適用拡大を検討するなど多様な働き方に対応できる仕組みを整え、従業員一人ひとりが考えるワーク・ライフ・バランスの実現を支援していきます。尚、取り組みの成果が認められ、キリンビールとキリンビバレッジでは2007年に、協和発酵キリンでは2015年に「くるみん(次世代認定マーク)」を取得しました。
キリングループの成長を支えるもっとも大切な経営資源である従業員の健康は重要なテーマです。キリングループでは、2009年よりEAPを導入し、メンタルヘルス不調の未然予防策の実施、早期発見・早期治療に向けた対策の実施および専門性の高い支援体制を構築しており、2015年12月から義務づけられたストレスチェックへの対応も実施しています。
また、EAPの結果を組織ごとに分析し、職場環境や組織風土に関する組織診断も併せて実施することで、人と組織を継続的に成長させることにつなげています。