Part1 R&D戦略担当役員インタビュー
健康分野の社会課題解決を通じて持続的な成長を目指す
「世界のCSV先進企業」を目指すキリングループは、事業活動を通して創出した多様な価値を社会に提供しています。中でも私たちが重視する価値が、人々の「健康」です。健康寿命の延伸や生活習慣病の改善が多くの国や地域の重要課題になるなど、健康分野にはさまざまな課題が存在しています。キリングループは、そうした健康課題の解決を通して経済的・社会的価値を創出することで持続的な成長につなげていこうと考えています。
価値創出における競争力の源泉は100年以上にわたって培ってきた発酵・バイオテクノロジーです。このコア技術をベースに、キリングループは飲料・食品から医薬品までの幅広い領域で強みをもつ事業体へ進化してきました。そして、これらの強みを生かして、医と食をつなぐ「ヘルスサイエンス」という新たな領域での価値提供への挑戦を開始しています。
アプローチ①予防医療への貢献
キリングループは、2つのアプローチでヘルスサイエンス領域の成長戦略を推進しています。その1つは「予防」です。現在は病気になった患者さんの治療だけでなく、病気になる前の健常者に対する予防活動も医療の一部である、という考え方が主流になっています。健常者と患者の間にはさまざまなレベル・段階があり、それらはシームレスにつながって いるため、病気の予防には多様な方策が考えられます。
機能性飲料・食品をはじめ、キリングループはこれまでも健康づくりに役立つさまざまな商品やサービスを提供してきましたが、予防医療という観点で商品・サービスを捉え直すことで事業機会の拡大を目指しています。
アプローチ②お客様一人ひとりの健康ニーズへの対応
もう1つのアプローチは「個別化」です。例えば生活習慣病や認知症は、生活様式や社会環境、心身の相互作用など複数の因子が関係しており、個々の患者さんの症状や環境に応じた対応が求められます。
こうした個別化は治療の段階だけでなく、予防を主とするヘルスサイエンス領域でも重要になっています。そこで、資本業務提携したファンケルとも連携して、お客様一人ひとりの健康ニーズに沿ったきめ細かい商品・サービスの開発やマーケティングを強化していく考えです。さらにゲノム(遺伝情報)など個人のバイタルデータに基づいたビジネスも視野に入れ、新事業開発を進めていきます。
また、個別化した商品・サービスの開発に向けて、ビッグデータ活用も強化していきます。例えば、腸内細菌の「普通の状態」を知るには大量の健常者データが必要です。このためグループのR&D資源を結集するとともに、パートナー企業とのアライアンスや公的プロジェクトへの参加、AIの活用などでビッグデータの蓄積・解析にも取り組んでいきます。
キリングループが取り組む課題とニーズ
キリングループの研究開発力を基盤に社会に新たな価値を提供し続ける
ヘルスサイエンス領域を推進する上で、グループ内に医薬事業を展開する協和キリンをもつことは大きなアドバンテージであると考えています。これまで「医」と「食」のビジネスは、法律の壁もあり個別で動いてきましたが、前述のように今後の価値創出には両者をシームレスに捉えることが重要になります。
「健康」というターゲットに「医」と「食」の両側からアプローチできることは、キリングループならではの強みです。同じ素材であっても、医薬の視点と食の視点では目指すゴールが変わってきます。従来は医薬品の素材として見ていた素材を食の視点から捉えることで、新たな価値が見えてくる可能性があります。そして、この2つの事業領域は基礎研究の部分で共通する要素が多く、グループ内の連携・協働によるシナジーが特に期待されるところです。これからも私たちキリングループの研究開発力を基盤に、人々の健康課題に応える新たな価値の創出に取り組んでいきます。