メルシャン株式会社(本社:東京、社長:植木 宏)は、『ワインと魚介の組み合わせで発生する生臭みに対する油脂の影響』を解明しました。この研究成果を、「日本味と匂学会第43回大会」(会期:9月2日(水)~4日(金))で発表します。
▼研究の背景
ワインと料理の組み合わせはワイン用語で「マリアージュ(結婚)」といわれ、ワインを楽しむための重要な要素です。一般的に「白ワインに魚」「赤ワインに肉」といった組み合わせが合うといわれていますが、そのメカニズムのすべては解明されていません。
例えば、西洋では、ワインと魚介料理の組み合わせは一般的に受け入れられています。しかしながら、日本においては、ワインと魚介料理を合わせた時に、まれに、口中で瞬時に生臭みを感じることがあり、魚介料理とワインの相性を提案する上での課題のひとつになっています。
和食の魚介料理では、てんぷらやサラダ仕立てを除くと、油脂を加えるレシピがあまりありません。一方、魚介料理に関する洋書によると、洋食の魚介料理の多くは、オリーブオイルやバターが用いられています。当社では、このことに着目して研究に取り組みました。
▼研究の概要
これまでの研究で当社はワイン中の「鉄」が多いほど、生臭みが強くなることを確認しています。今回の研究では、料理に用いられる油脂が、生臭みの感じ方に与える影響を解明するための試験を実施しました。
具体的には、生臭みを発生しやすいホタテの干物と鉄を含有するモデルワインの組み合わせに、オリーブオイルを添加して、官能評価を実施しました。
その結果、油脂を魚介料理へ添加することで、生臭み成分の放散が抑制され、生臭みを感じなくなりました。
つまり、今回の研究の結果は、ワイン中の「鉄」と魚介料理の組み合わせにおいて、生臭みがたとえ発生しても、油脂を用いる洋食の魚介料理では、その感じ方が抑えられることを示唆しています。それに対して、油脂を用いない和食の魚介料理では、生臭みを強く感じてしまうことも示唆しています。
▼今後の展開
この発見により、一般的に言われている「白ワインに魚」という組み合わせが、日本ではそのまま受け入れられないことを、科学的に説明できる可能性があります。
一方で、国産ぶどうを使った白ワインには「鉄」の含有量が少ないという調査報告があります。
今回の発見を踏まえ、お刺身やおすしなど素材を活かす和食と「甲州ワイン」をはじめとする国産ぶどうを使った白ワインとの相性の良さを解明する研究をさらに進めていきます。
当社はこの発見を科学的根拠に基づいたより明確で具体的な「ワインと料理のマリアージュ」の提案に活用し、お客様に「ワインのある豊かな食卓」を紹介することで、ワイン市場、日本の食文化発展に貢献していきます。
【発表の概要】
◆発表演題名 |
『魚介料理への油脂の添加が魚介料理とワインを組み合わせたときの生臭み感知へ与える影響』 |
◆学会名 |
日本味と匂学会第43回大会 |
◆発表場所 |
旭川市民文化会館(北海道旭川市7条通り9丁目) |
◆日時 |
2009年9月2日(水)~4日(金) |
◆発表者 |
メルシャン株式会社 商品開発研究所
田村 隆幸、谷口 潔、鈴木 由美子、大久保 敏幸、高田 良二、金野 知典 |
|