2009年9月11日

缶入りブラックコーヒー飲料の加温による香味劣化抑制手法の開発
〜長期間の加温により発生する劣化酸味をカフェ酸によって抑制〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)のフロンティア技術研究所(横浜市、所長 水谷悟)とキリンビバレッジ株式会社(社長 前田仁)の開発研究所(横浜市、所長 出内桂二)は、お客様により高い品質の製品を提供していくために、品質保持技術をはじめとしたお客様のおいしさにつながる研究開発に取り組んでいます。
 その一環として、缶入りブラックコーヒー飲料(以下缶コーヒー)を高温で長時間保管した際に雑味(劣化酸味)の原因となる物質の発生メカニズムを研究し、その発生を抑制する手法の開発に成功しました。この研究成果は、9月12日に日本食品科学工学会第56回大会で発表します。

 一般的に、缶コーヒーでは、冬季にホット飲料として販売される際などに高温で長期間保管すると、外観的な濁りや渋味、酸味を伴う雑味(劣化酸味)が生じることがあり、缶コーヒーの品質を保持する上で課題となっていました。
 当社は今回、この劣化酸味が、缶コーヒーを高温で保管した際、時間経過に伴って増加するカフェ酸※1と疎水性の高い成分※2の相乗効果により発生することを明らかにしました。さらに推定されるカフェ酸の発生メカニズムから、劣化酸味の発生を抑制する手法を新たに開発しました。

  • ※1 コーヒーに含まれているポリフェノールの一種。コーヒー酸ともいう。
  • ※2 疎水性物質(水に溶けにくい物質)を吸着する樹脂を利用して、コーヒー中の物質を水への溶けやすさでいくつかの集団に分けた際に、最も水に溶けにくい集団として分けられた物質群のこと。

 劣化酸味の原因物質の一つと判明したカフェ酸の発生メカニズムを追跡した結果、缶コーヒーの成分の一つであるクロロゲン酸、クロロゲン酸ラクトン※3の加水分解によるものではないことが分りました。また、カフェ酸を添加した缶コーヒーを高温で保管したところ、カフェ酸は増加せず、劣化酸味が抑制されることを発見しました。このことから、一定濃度以上のカフェ酸が存在すると、コーヒー成分からカフェ酸と疎水性成分への分解が抑えられるため、劣化酸味が抑制されると推定されます。またカフェ酸含量の多いコーヒーエキスを缶コーヒーに用いた場合にも、加温による劣化酸味を抑制できることがわかりました。

  • ※3 いずれもコーヒーに含まれる成分で、その化学構造にカフェ酸が含まれているため、加水分解によりカフェ酸の発生源となりうると予想される。

 これらによって、缶コーヒーの劣化酸味発生メカニズムが推定できると共に、今後さらに開発が進展することで、お客様に提供する缶コーヒーの劣化抑制と香味安定性向上が期待されます。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。