2011年1月19日
2011年 キリンビール事業方針
~誰よりもお客様の近くに。そして、もっと豊かなひとときを。~
キリンビール株式会社(社長 松沢幸一)は、キリングループ長期経営構想「キリン・グループ・ビジョン2015」(略称:KV2015)実現に向けた第2ステージである「2010-2012年キリングループ中期経営計画」の2年目として、2011年のスタートを切りました。今年も、キリングループの成長を支える中核会社として、お客様にとって価値ある商品の提供を通じてキリンブランドの価値を高め、将来にわたってお客様から最も支持される企業を目指します。
■2011年キリンビール事業計画基本方針
- 1.選択と集中によるブランド力の強化
- 2.新しい商品・カテゴリー・ビジネスモデルにつながる価値創造
- 3.価値営業のさらなる進化
- 4.海外におけるキリンビールブランドの販売強化
- 5.生産性・コスト競争力の向上
- 6.CSR視点による価値創造
- 7.人材育成と組織力の強化
■2010年の振り返り
夏は天候に恵まれたものの、少子高齢化や生活防衛意識の高まりなどの影響により、ビール・発泡酒・新ジャンルの総市場が減少する中で、当社の課税出荷数量は1億6,860万箱となりました。
当社は、「定番商品強化」「健康志向への対応強化」「総需要拡大」の3つの課題を中心に取り組みました。大きく市場が拡大した新ジャンルでは、引き続き圧倒的な存在を誇る「キリン のどごし〈生〉」が高い支持をいただきました。発泡酒では、定番の「淡麗」シリーズがトップポジションをさらに強化し、中でも「淡麗グリーンラベル」は対前年プラスと好調に推移しました。ビールでは、「キリン一番搾り生ビール」が堅調に推移したほか、10月からは日本国内のビールブランドとして初めてドイツでの製造を開始しました。ノンアルコール・ビールテイスト飲料では、世界初※1“アルコール0.00%”の「キリン フリー」が、飲酒運転に対する問題意識の高まりなどにより、驚異的な勢いで支持を拡大しました。RTDは、「氷結」に加え「世界のハイボール」や「フォアローゼズ ハイボール」「I.W.ハーパー ハイボール」などの発売により、対前年プラスと好調に推移しました。
- ※1 ビールテイスト飲料カテゴリーにおける。当社調べ
■2011年の取り組み
市場環境が激変する中で、当社は上記基本方針に取り組むことでお客様支持の拡大を図ります。また、グループ全体の成長に貢献する中核会社としてグループ連携を進めることで、綜合飲料グループ戦略を一層推進します。
■2011年キリンビール販売目標 単位:大びん20本換算(RTDは250ml×24本換算)
ビ・発・新 計 | ビール | 発泡酒 | 新ジャンル | ビールテイスト飲料 | RTD |
1億6,590万箱 (▲2.4%) |
5,610万箱 (▲5.2%) |
4,630万箱 (▲11.3%) |
6,350万箱 (+8.5%) |
630万箱 (+3.3%) |
3,610万箱 (+8.1%) |
1.選択と集中によるブランド力の強化
ビール・発泡酒・新ジャンルに加え、ノンアルコール・ビールテイスト飲料やRTDを含めた有力ブランドに資源を集中し、ブランド力のさらなる強化を図ります。
ビールでは、「キリン一番搾り生ビール」の新広告を通じて、麦100%、一番搾り麦汁だけでつくった世界に誇るビールであることを伝えることでブランド力をさらに強化します。発泡酒では、糖質70%オフ※2の「淡麗グリーンラベル」をリニューアルし、お客様からの支持をさらに強化します。各社からの新商品投入が続く新ジャンルでは、「のどごし〈生〉」に注力し、これまでにない大規模な販促や、好評な広告を通じてさらなる支持拡大を図ります。
拡大を続けるノンアルコール・ビールテイスト飲料は、この市場のパイオニアである「キリン フリー」をリニューアルし、おいしさにさらに磨きをかけることで、市場を強力に牽引していきます。
RTD市場を牽引する「氷結」は、「氷結」ストロングシリーズを“果汁感をさらに高めた強い飲みごたえの糖類ゼロ”としてリニューアルするほか、「氷結」ブランド全体を強化する施策を実施することで、さらなる支持拡大を図ります。
- ※2 文部科学省が公表している五訂増補日本食品標準成分表の「発泡酒」糖質量(≒炭水化物-食物繊維)と比較。
2.新しい商品・カテゴリー・ビジネスモデルにつながる価値創造
09年に発売した「キリン フリー」は、それまでに存在しなかったアルコール0.00%のビールテイスト飲料市場を創造しました。さらに10年に発売した「休む日のAlc.0.00%」は、しじみ900個分のオルニチンを配合※3した新しいコンセプトが好評をいただき年初目標を上方修正しました。11年も新しいカテゴリー創出につながる価値創造へ積極的にチャレンジしていきます。そのためにリサーチ・マーケティング・営業の連携により、お客様の潜在ニーズを掘り起こすとともに、将来の競争優位の源泉となるイノベーションを実現するため、総合酒類各カテゴリーで嗜好、健康、環境をテーマとした商品・技術開発を推進していきます。
お客様の健康志向は引き続き高まっていくと予想されます。当社では、伸張著しい新ジャンル市場において、糖質ゼロかつカロリーオフ※4とコク、飲みごたえを両立させた新商品「キリン 濃い味〈糖質0(ゼロ)〉」を2月に発売し、お客様の健康志向の高まりにお応えする新提案を行います。
また、若者や女性のライフスタイルに合ったお酒を提案することで酒類市場の活性化を図ります。まず、“ゆっくりと夜長を楽しむお酒”をコンセプトとしたRTD「キリン 夜カフェ」を1月から関東1都6県※5のコンビニエンスストア限定で通年販売します。次に、成長を続ける梅酒市場において、梅のたねだけを浸漬する「豊潤たね熟製法」でできた杏仁のような香りとコクのある豊かな味わいが特長の「キリン まっこい梅酒」を3月から発売します。さらに、10年11月からコンビニエンスストアで限定発売している「フォアローゼズ ハイボール」「I.W.ハーパー ハイボール」は、販売好調により、3月より販売チャネルの拡大を行います。
- ※3 オルニチン400mg配合(1缶あたり)。この商品のオルニチンは、しじみ由来ではなく、発酵法で製造されたアミノ酸
- ※4 「カロリーオフ」は100mlあたり20kcal以下のもの、「糖質ゼロ」は100mlあたり糖質0.5g未満のものに表示可能。(栄養表示基準による)
- ※5 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、群馬県、茨城県
3.価値営業のさらなる進化
これまで取り組んできた、価格ではなく価値で商品を選択してもらえることを目指す価値営業をさらに進化させるため、12年1月に当社の営業部門とキリンマーチャンダイジング社を統合した新会社(社名:キリンビールマーケティング株式会社、本社所在地:東京都渋谷区、資本金:5億円の予定)を設立します。これによりお客様接点でのマーケティング活動を強化し、企業理念「酒類事業の誓い」の実現を目指します。キリンビールマーケティング社は、得意先企業との本部商談から量販店や飲食店の店頭活動まで一貫したマネジメントにより意思決定と活動のスピードアップを図り、効率的で強固な地域密着型の営業体制を築きます。
また、「富士山麓」「フォアローゼズ」に加え、「ジョニーウォーカー」をはじめとしたディアジオ社の洋酒、メルシャン社のワインのラインアップを活かした総合酒類提案力の向上を図ります。
さらに業務用市場では、キリンビバレッジ社が開発し、当社が営業活動を担う「キリン 烏龍茶」などの拡売を強化するほか、量販市場では、当社とメルシャン社との販売体制の見直しを進めることでワインの拡売を強化するなど、綜合飲料グループ戦略を強力に推進します。
4.海外におけるキリンビールブランドの販売強化
キリンビールブランドを展開する、キリンブルワリーオブアメリカ社(米国 カリフォルニア州)、キリンヨーロッパ社(ドイツ デュッセルドルフ)、台湾麒麟啤酒股份有限公司(台湾 台北市)、およびフォアローゼズブランド商品を展開するフォアローゼズディスティラリー社(米国 ケンタッキー州)の海外事業会社4社、ならびに輸出事業を1月よりキリンホールディングス社直轄から、当社直轄に変更します。
当社がブランドオーナーとして、「キリン一番搾り」をはじめとするキリンビールブランドを直接マネジメントする体制を構築することにより、海外での販売・輸出を強化し、アメリカ、ヨーロッパ、アジア地域におけるキリンビールブランドの拡大を目指します。
また、国内で好調な「キリン フリー」については、今春のアメリカ合衆国でのテスト販売により海外展開を開始するとともに、他の地域についてもお客様の需要を調査し拡大を検討していきます。
5.生産性・コスト競争力の向上
PBの伸張や価格競争など、いかなる環境変化にも対応できるコスト競争力を強化するために、構造改革に継続的に取り組みます。
生産部門では、10年に生産拠点の再編成を実施し、滋賀工場は少量多品種製造工場としてリニューアルしました。11年は9工場の設備を最大限活用することで、より効率的な製造体制の構築を目指します。
物流部門では、受注から配送までの物流現場機能を一元化することで効率化を目指します。10年はキリン物流社の組織を7支社から4支社に統合、受注場所を7カ所から2カ所に集約しました。11年は、物流業務のプロセス改革に取り組み、新物流システムを活用しながら業務の標準化を進めることで一層の生産性の向上を図ります。
また、生産・SCM・営業の各部門が連携し、商品の転送数量の削減や、商品運搬時の増トントラックの活用、パレット回収の強化などのTCR活動※6やカイゼン活動をさらに推進するなど、バリューチェーン全体でコスト削減に取り組みます。
- ※6 Total Cost Reform の略。生産・SCM・営業の各部門間にまたがってコストアップ要因となっている課題を、各部門が横断的に協力して課題解決することでコスト削減を実現していく取り組み。
6.CSR視点による価値創造
11年は、CO2削減など、環境に配慮した商品開発や施策に取り組むことで、CSR視点による新たな価値創造を目指します。さらに、社外の有識者と意見交換の場を定例的に設けるなど、社会からの期待・要請を的確に把握し、事業に反映していきます。従来の取り組みも、「環境」と「健康・アルコール関連問題」をテーマに一層推進していきます。
「環境」では、限りある資源を大切にする取り組みや、地球温暖化防止に向けたCO2の削減の取り組みとして、容器包装の3R、工場でのエネルギー構造解析※7によるさらなる省エネ・用水削減、他社との共同配送や、サプライヤーと協力しての双方の車両効率運用、モーダルシフトの推進など、環境保全取り組みの業界トップランナーである「エコ・ファースト認定企業」※8として活動を強化します。当社は、12年までの目標として国内における製造・物流・オフィスのCO2排出量を90年比で60%削減(総排出量)を掲げ、早期の達成に向けて取り組んでいます。
「健康・アルコール関連問題」では、“アルコール0.00%”の「キリン フリー」を通じて全日本交通安全協会が提唱、日本フードサービス協会、日本自動車連盟(JAF)が推進する「ハンドルキーパー運動」を引き続き支援し、飲酒運転根絶に向けた取り組みを一層強化していきます。また、「休む日のAlc.0.00%」を通じて休肝日も推奨していきます。10年5月にはWHOによる世界戦略※9が採択され、世界的にアルコール関連問題への取り組みが求められています。当社では、専門部署であるARP室※10を2月より新設し、アルコール関連問題取り組みを一層推進していきます。
- ※7 エネルギー使用の流れと量を詳細に解析することにより、ムダを特定して省エネにつなげる仕組み。
- ※8 企業の環境保全取り組みに関する業界のトップランナーとして認定され、環境大臣に環境保全に関する取り組みを約束している企業。
- ※9 アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略
- ※10 ARP=Alcohol Related Problem = アルコール関連問題
7.人材育成と組織力の強化
部門横断型プロジェクトを通じた人材育成、海外事業会社を通じたグローバルな人材育成をさらに進めます。
06年から取り組んでいる組織風土改革を目的としたV10活動では、企業理念である「酒類事業の誓い」の実現を目指し、意識や行動の主体的な変革を推進します。具体的には、社員一人ひとりが自ら考え行動する組織風土づくりと、現場の意見が経営に迅速に活かせる仕組みづくりを目的としたトップとの対話集会、フォーラムによる企業理念のさらなる浸透、コーチングコミュニケーションの拡充、カイゼン活動の推進など、自由闊達な組織風土を醸成していきます。
キリングループは、「おいしさを笑顔に」のグループスローガンを掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。