[食領域]
~世界で初めて解明、新たな飲料開発の可能性に期待~
2019年4月11日
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典、以下キリンHD)の飲料技術研究所(所長 吉田有人)は、大阪大学(学長 西尾章治郎)大学院基礎工学研究科流体工学グループの渡村友昭助教、岩坪史弥(博士前期課程)、杉山和靖教授らとの共同研究で、「コップに注いだギネスビールの泡が作り出す模様の発生メカニズム」を検討し、「雨水が傾斜面を下降する際に現れる模様(転波:てんぱ※1)」と同様に、「コップの傾斜面を液体のかたまりが転がり落ちることによって模様が発生する」ことを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」にて、4月5日(金)18時(日本時間)に公開されました。
本研究成果は、泡や粒子が介在する工業分野や、タンパク質の結晶成長や細胞培養などのライフサイエンス分野における流れの理解と制御に役立つことや、ビールや飲料に含まれる泡の運動の理解、ひいては新しい飲料の開発に繋がるものと期待されます。
研究背景
ビールや飲料にとって“泡”は、味わいに影響する重要な要素の一つです。1759年にアイルランドで誕生し、現在、世界150カ国以上で楽しまれている、プレミアムスタウトビール「ドラフトギネス」は、「カスケード泡」と呼ばれる特長的な泡が独特な味わいや見た目をつくりだし、人気の理由の一つとなっています。そこで、当社は本研究グループにて、“ギネスビール”の泡の謎に迫る研究を開始しました。
研究内容
「ドラフトギネス」は、窒素ガスが加圧封入されており、コップに注ぐと炭酸飲料などに含まれる炭酸ガスの泡の10分の1程度の微細な泡が発生し、泡がコップの上から下へと移動する美しい模様(図1)が現れることが知られています。しかし、これまで「ドラフトギネス」の泡が作り出す模様の発生原因について、いくつかのモデルが示唆されていましたが、模様の発生条件は特定されていませんでした。
今回、本研究グループは透明な「模擬ギネスビール」を作成し、レーザー誘起蛍光法※2を用いた「粒子画像速度計測法※3」や「分子タグ法※4」を用いた可視化実験により、今まで「ドラフトギネス」の液体が黒く、不透明なため不可能だった液体の速度分布を精緻に計測することに成功しました。
図1 ギネスビールの泡が織りなす模様
研究成果
本研究は、泡が模様を作る条件は「容器の傾斜」に強く依存することを示しており、コップ内部に発生する泡の密度勾配により現れる泡の少ない液体が、コップの傾斜壁に沿って流れる際に、重力流の不安定波である「転波」の発達によって泡の模様が現れることを明らかにしました。
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。
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