[食領域]
-副産物である焼酎粕の有効利用、価値化の可能性-
2019年10月23日
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)の健康技術研究所(所長 小川俊也)は、メルシャン株式会社(社長 長林道生)、国立大学法人東京大学(総長 五神真)と共同で、焼酎製造過程に生じる蒸留残渣(焼酎粕)が豚のストレスを低減し、豚肉の嗜好性を向上させることを世界で初めて確認しました。この研究成果について、10月24日(木)から10月25日(金)に福島県で開催される「第111回日本養豚学会大会」で発表します。
家畜のストレスは感染症のリスク増加や畜産物の質および量の低下の原因となり、経済損失や畜産物のブランド力低下につながるため、家畜の健康維持は畜産農家にとって重要な課題です。また、価格競争が進む国内の畜産物において、付加価値などの差別化は重要です。当社は2019年9月に神戸大学大学院医学研究科と共同で、特定のペプチド成分(LHジペプチド)がストレス応答を改善することを確認しました※1。さらに、メルシャン株式会社八代工場(以下、八代工場)での焼酎製造過程で生じる焼酎粕にこの機能性ペプチドが豊富に含まれることを発見しました。
今回、当社は東京大学との共同研究で、東京大学大学院農学生命科学研究科付属牧場にて、八代工場で生産量の多い麦焼酎の焼酎粕の給餌が豚のストレスおよび肉質へ及ぼす影響を評価しました。その結果、官能評価パネルを対象とした非明示の官能評価で、焼酎粕を給餌した豚のロースおよびフィレ肉の柔らかさ、旨味、多汁感が有意に高いスコアを示しました。また、焼酎粕を給餌した豚のロースおよびフィレ肉でのオレイン酸※2の割合が有意に増加し、唾液中のストレス指標が有意に低下しました。これらの結果より、焼酎粕給餌は豚のストレスを低減し、肉質が向上したことが示唆されます。
東京大学大学院農学生命科学研究科の付属牧場で三元豚に八代工場の麦焼酎の蒸留残渣(焼酎粕)を含む飼料および同量の原料の麦を含む飼料を90日間給餌しました。経時的に唾液を回収し、唾液中のストレス指標を測定しました。豚肉(ロース肉およびフィレ肉)に含まれる脂肪酸組成、脂肪の融点を測定し、「独立行政法人家畜改良センター」の「技術マニュアル21」に従い、官能評価パネルによる非明示の官能評価を行いました。
副産物である焼酎粕による家畜の健康増進の観点での価値化につなげ、より有効な再利用方法を進めていきます。
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。
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