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[食領域]

世界初!「ビール苦味成分による認知機能改善効果」をヒト試験で確認

-「熟成ホップ由来苦味酸」を用いた試験を実施-

  • 研究・技術

2019年10月31日

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)の健康技術研究所(所長 小川俊也)は、ビール苦味成分としても知られる「熟成ホップ由来苦味酸」が認知機能の1つである記憶想起力を改善することを世界で初めて確認しました。当社はこの研究成果を2019年6月にベルギーで開催されたヨーロッパ醸造学会にて発表しました。

背景・これまでの経緯

急速に高齢化が進む国内において、認知症や認知機能低下は大きな社会課題となっています。認知症発症後の有効な治療方法が十分でないことから、食事を含めた日常生活における予防に注目が集まっています。当社は2017年に東京大学と共同で、ビール苦味成分イソα酸のアルツハイマー病予防効果を解明しました※1。さらに2018年には東京大学、神戸大学との共同研究等で、イソα酸および「熟成ホップ由来苦味酸」の認知機能改善効果を解明しました※2。

本試験の概要

今回、当社は、健常中高年を対象にランダム化比較試験を実施し、「熟成ホップ由来苦味酸」を含むサプリメントの、認知機能への作用を評価しました。その結果、「熟成ホップ由来苦味酸」摂取群ではプラセボ摂取群と比較して認知機能の一部の記憶想起力が有意に改善することが確認されました。ビール苦味成分が認知機能を改善することをヒト試験で確認したのは世界で初めてです。

試験方法

試験は45歳から64歳の健常中高年60名を、「熟成ホップ由来苦味酸」を含むサプリメントを摂取する群(熟成ホップ摂取群)およびプラセボ摂取群に無作為に割り付け、12週間摂取させる二重盲検化試験を行いました。摂取0週目、6週目および12週目に被験者の認知機能について、神経心理テストを用いて評価を行いました。

試験結果

熟成ホップ摂取群では、摂取6週目の前頭葉機能検査で記憶想起力や実行機能を評価する語流暢性試験※3の結果が、プラセボ摂取群と比較して有意に改善しました(図1)。その他、日常記憶チェックリスト※4の物忘れ尺度を評価する質問紙でも「熟成ホップ由来苦味酸」摂取群はプラセボ摂取群よりも主観的な物忘れの改善作用を示しました(図2)。「熟成ホップ由来苦味酸」は認知機能の中でも特に記憶想起力に効果があることが分かりました。

今後の展開

本成果をもとに、「熟成ホップ由来苦味酸」を多く含む食品や飲料を開発するなど、食を通じて認知症予防や認知機能改善に貢献することが期待されます。

  • ※1 論文タイトル:Iso-α-acids, Bitter Components of Beer, Prevent Inflammation and Cognitive Decline Induced in a Mouse Model of Alzheimer's Disease.
    著者:Ano Y, Dohata A, Taniguchi Y, Hoshi A, Uchida K, Takashima A, Nakayama H
    雑誌名:Journal of Biological Chemistry
  • ※2 論文タイトル:Matured Hop-Derived Bitter Components in Beer Improve Hippocampus-Dependent Memory Through Activation of the Vagus Nerve.
    著者:Ayabe T, Ohya R, Taniguchi Y, Shindo K, Kondo K, Ano Y
    雑誌名:Scientific Reports
  • ※3 臨床や心理学的研究で使用される前頭葉機能検査の一つ。
  • ※4 認知機能低下や記憶障害によって日常生活上起こりうる問題点を標準化された質問票

キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。

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