[ヘルスサイエンス領域]

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種によって新型コロナウイルスおよびインフルエンザウイルスへの増殖抑制効果を確認

~鼻腔粘膜細胞の自然免疫応答の増強を確認~

  • 研究・技術

2024年11月18日

キリンホールディングス株式会社

2024年11月18日付けのリリースについて、タイトルおよび文中の「感染防御」の文言を「増殖抑制」に訂正しましたことをお知らせいたします。

ご迷惑お掛けいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。

2024年11月20日

キリンホールディングス株式会社(社長 COO 南方健志、以下、キリン)は、今まで実用化の例がない、自然免疫誘導型ワクチンの研究開発において、国立感染症研究所(副所長 俣野哲朗)との共同研究により「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種によって、新型コロナウイルスおよびインフルエンザウイルスへの増殖抑制効果を非臨床実験にて確認しました。当研究成果は愛知で開催された、第28回日本ワクチン学会(2024年10月26日(土)・10月27日(日))および第71回日本ウイルス学会学術集会(2024年11月4日(月)~11月6日(水))で発表しています。
キリンは、2021年に国立感染症研究所と「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の医薬品開発に関する共同研究を開始し、これまでに「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」で刺激した形質細胞様樹状細胞(以下、pDC)培養上清が、新型コロナウイルスの増殖抑制に寄与することを確認してきました※1。今年3月には、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」が、新型コロナウイルスをはじめとする呼吸器ウイルス感染を予防する手段となり得る点が評価され、AMED※2の先進的研究開発戦略センター(以下、SCARDA)が公募した、「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業」への採択が公開されました※3。「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」は、ウイルス増殖を抑制することで感染症リスクの低減に寄与する可能性が考えられるため、そのメカニズムについては、今後も継続して検証を行っていきます。
※1 Ishii et al, BBRC 662:26, 2023.
※2 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
※3 キリンホールディングス ニュースリリース 2024年5月8日(水)
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0508_06.html

研究成果(概要)*非臨床段階の実験

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種により、鼻組織由来細胞においてウイルス感染防御に重要な免疫細胞であるpDCの割合増加や抗ウイルス遺伝子の発現が認められました。
※グラフ内のViperin、Oasl2、Isg15は抗ウイルス遺伝子の名称

  • 図.経鼻接種によるpDCの割合

  • 図.経鼻接種による抗ウイルス遺伝子の発現増加(Viperin、Oasl2、Isg15)

また、経鼻接種によって、鼻腔内などにおいて、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの増殖を抑制することを確認しました。

  • 図.新型コロナウイルスの増殖抑制

  • 図.インフルエンザウイルスの増殖抑制

得られた示唆

これらの研究結果により、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種によって、鼻組織などでの自然免疫応答を増強し、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの呼吸器ウイルス全般に対する感染予防効果を発揮する可能性が示唆されました。

キリングループは、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の研究開発を通じて、世界の人々の健康へ貢献していきます。

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種における研究成果について

<背景・目的>

自然免疫反応は、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの呼吸器ウイルス感染症において感染防御や増殖抑制に重要な役割を担っています。新型コロナウイルスのパンデミックを契機に、日本政府は令和3年6月1日に閣議決定された国家戦略「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を踏まえ、今後脅威となりうる感染症に対応できるよう、令和4年3月にSCARDAを設立し、ワクチン開発支援を進めてきました。ワクチン接種は、ウイルスや細菌等の病原体に対する防御免疫を作り出すことが目的であり、病原体抗原を標的とする抗体やT細胞を誘導することによって効果を発揮します。一方で、インターフェロン(以下、IFN)などの自然免疫メモリーを誘導するワクチンの可能性が模索※4されていますが、現時点では実用化には至っていません。
キリンはこれまでの研究で、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」が自然免疫細胞の一種であるpDCを活性化させ、IFN-α産生能を高める作用や感染症予防効果などを明らかにしてきました。本共同研究は、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種による自然免疫誘導型のワクチン開発を目的とし、呼吸器ウイルス感染症から世界中の人々を守ることを目指すものです。
※4 Yan J et al., Sci.Transl.Med. 15:eadf9556 (2023)

研究成果①:6時間後にpDCの割合・抗ウイルス遺伝子発現が最大となることを確認

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」群は、経鼻接種から6時間後に、鼻腔粘膜細胞の抗ウイルス遺伝子が対照群と比較して上昇したことを確認しました(図1)。また、鼻腔粘膜細胞のpDCの割合は「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種から6時間後から24時間まで対照群と比較し有意に上昇したことが確認されました(図2)。

  • 図1.経鼻接種による抗ウイルス遺伝子の発現増加(Viperin、Oasl2、Isg15)

  • 図2.経鼻接種によるpDCの割合

研究成果②:経鼻接種による鼻腔粘膜細胞での自然免疫の増強を確認

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」群では、元来pDCを活性化するCpG-A(ODN1585)※5もしくは不活化インフルエンザウイルスH1N1※6を一緒に加えた培養試験において、IFN-α産生量が増強されたことを確認しました(図3)。
※5 CpG-A(ODN 1585):人工的に作られたpDCを活性化する成分
※6 H1N1:インフルエンザウイルスの種類(型)の名前

  • 図3.経鼻接種によるpDC活性化作用(ウイルス関連成分存在下)

研究成果③:経鼻接種による肺と鼻でのウイルス増殖抑制効果を確認

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」群を経鼻接種したのち、SARS-CoV-2・インフルエンザウイルスを感染させウイルス量を解析したところ、肺と鼻において、SARS-CoV-2およびインフルエンザウイルス量が有意に低下し、ウイルス増殖抑制効果が確認されました(図4、図5)。

  • 図4.新型コロナウイルスの増殖抑制

  • 図5.インフルエンザウイルスの増殖抑制

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