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世界の患者さんのクオリティ・オブ・ライフ向上に貢献する

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2019年08月04日

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CSVコミットメント 治療領域の進化

キリングループの医薬事業を担う協和キリンは、「ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します」という経営理念を掲げています。この理念のもと、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使し「腎」「がん」「免疫・アレルギー」「中枢神経」の4つの疾患領域を研究開発における重点カテゴリーと位置づけた新薬創出活動を展開しています。
その一例として、2018年に欧州委員会およびアメリカ食品医薬品局から医薬品販売承認を取得した「X染色体連鎖性低リン血症(XLH)」の治療薬「KRN23(欧米製品名Crysvita、一般名:ブロスマブ、開発番号:KRN23)」の開発事例を紹介します。

難病「XLH」の治療を革新する

2018年にアメリカおよびヨーロッパの一部で販売が開始された新薬Crysvita(欧米製品名、一般名:ブロスマブ、開発番号:KRN23)は、X染色体連鎖性低リン血症(XLH)という病気の治療薬です。
XLHは骨の形成に必要なリンやビタミンDが腎臓から漏れ出てしまい、骨の成長や維持に障害をきたす難病です。発症頻度は2万人に1人程度の希少疾患で、患者さんの多くは成長不全に苦しんでいます。
これまでXLHの治療法は、リンとビタミンDを補充する対処療法しかなく、しかも1日に何度も服薬が必要で、さらに腎臓の石灰化という副作用も伴うものでした。これに対しKRN23による治療は、2または4週間に1回の注射で済みます。これにより血中リン濃度が正常域に上昇・維持され、骨の成長、痛みや身体機能の改善など、XLH患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)が大幅に高まることが確認されています。

「FGF23」がリンの調節因子であることを世界で初めて発見

私はもともとキリンの医薬開発研究所(当時)で、「骨代謝」を研究していたのですが、そこに重点領域の「腎」を重ね合わせ、リンに着目したことが開発のきっかけでした。リンはカルシウムに次いで体内に多く存在するミネラルで、骨や歯の主要構成要素です。しかしカルシウムに比べるとリンの調節の仕組みに関する研究は世界的に遅れており、そこにチャンスがあると考えたのです。
2000年には低リン血症の病態研究などから、「FGF(線維芽細胞増殖因子)23」が血中リン濃度の調整で中心的な役割を担うことを世界で初めて見出しました。FGF23は骨細胞で産生される血中リンを低下させる液性因子(ホルモン)であり、これ自体がすぐに薬となるわけではありませんでした。しかしFGF23を抑制することでビタミンDが上昇し、腎臓からのリンの排出が抑えられることから、XLHの治療に役立つのではないかと考え、研究を続けました。
問題はどうやってこのFGF23を抑えるかでしたが、自社のもつ「ヒト抗体産生技術」を活用することで、FGF23を抑える治療目的に適した完全ヒト抗体「KRN23」を創製することができたのです。

欧米で先行して製造販売承認を取得

KRN23はXLH治療薬の有望候補となり、2006年からは米国で臨床試験を開始しました。対象が希少疾患で患者数が限られることもあり、当初はかなり苦労しましたが、2013年に希少疾患を得意とするバイオベンチャーであるウルトラジェニクス・ファーマシューティカル社をパートナーに迎えたことで、開発は一気にスピードアップしました。
2018年2月には欧州委員会から条件付き医薬品販売承認を取得、そして2018年4月にはアメリカ食品医薬品局から医薬品販売承認を得ることができました。「XLHを適応症とする世界初の治療薬」が誕生したのです。
今後、日本をはじめアジア、オセアニアでもKRN23の承認取得を目指していきます。私たちはこれからも製薬会社の使命である革新的医薬品の創出と安定供給に努めるとともに、健康分野での社会課題の解決や、世界の患者さんのQOL向上に貢献することで、持続的に成長していきたいと考えています。

KRN23のパイプライン(2018年12月31日現在)

  • KRN23のパイプライン(2018年12月31日現在)

協和キリン株式会社
執行役員 経営戦略企画部長 薬学博士

山下 武美(Takeyoshi Yamashita, Ph.D.)

1987年、キリンビール(株)入社。医薬開発研究所(当時)で「骨代謝」を研究。2000年に生体内分子「FGF23」が骨の組成であるリンの調節に関わることを世界で初めて発見。FGF23を抑える抗体「KRN23」の創製に成功。

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

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