お酒の強さは人それぞれ

日本人の約4割はお酒に弱い!?

日本人などのモンゴロイド系の人々は、ヨーロッパ系やアフリカ系に比べてお酒に弱いと言われています。なぜかモンゴロイドの中に突然変異的に、お酒を飲んだ時に発生する有害物質アセトアルデヒドを分解する酵素「ALDH2」(アルデヒド脱水素酵素2)の活性をなくしてしまった人が出現し、時代を経るにつれ、モンゴロイド系にはお酒に弱い人種が次第に増えていきました。今日「ALDH2」低活性型(不活性型を含む)の存在はモンゴロイドの特徴となっています。ちなみに黒人、白人には「ALDH2」低活性型はみられません。

お酒の弱さは遺伝によるもの

なぜモンゴロイド系がお酒に弱いのかは、ALDH2の活性が、生まれつき弱いか欠けているという遺伝的な性質によるものです。

ALDH2の活性が弱いか欠けていると、アルコール分解産物である有害なアセトアルデヒドを速やかに分解できないため、少量のアルコールでも悪酔いしやすくなります。このため、両親ともにお酒に弱い人は「お酒に弱い体質」を受け継いでいますので、強くなろうと無理な努力をするよりも、自分の体質を知り、周囲にも知ってもらい、体質に応じた飲み方を守っていくことが大切です。

遺伝子型とアルコールに対する強さの関係

遺伝子型酵素ALDH2の活性タイプアルコールに強い人・弱い人備考人種別出現率
黒人白人モンゴ
ロイド
(日本人)
NN型 安定で正常な活性を有する「活性型」 「アルコールに強い人」と言われている アルコール依存症にならないよう要注意 100% 100% 56%
ND型 NN型の1/16の活性しかない「低活性型」 「アルコールに弱い人」又は「ほどほどに飲める人」と言われている 強くなろうと無理せず、適量を守りましょう 0% 0% 40%
DD型 ALDH2の活性が完全に失活した「不活性型」 「アルコールに全く弱い人」と言われている アルコールは飲めません 0% 0% 4%

性別・年齢による違い

「適量」は、性別、年齢、体質、健康状態などのさまざまな要素が関係するため、個人差があります。また、アルコール依存症や薬物乱用経歴がある場合には「適量」はありません。「適量」を自己判断でとらえるのではなく、複合的な要素を十分認識して知ることが大切です。

性別による違い

女性は体格の違いや女性ホルモンによる影響により、男性に比べてアルコールの分解速度が遅く、体脂肪が多く水分量が少ないため、体内の血中アルコール濃度が高くなりやすい傾向があります。

年齢による違い

20歳未満の人は、アルコールを分解する酵素が十分働かないため、 心身にさまざまな悪影響をもたらします。そのため、法律で飲酒が禁止されています。 また、高齢になるとアルコールの代謝能力が低下し、酔いやすくなります。

自分のアルコール体質を知るためのチェック

お酒に「強い」「弱い」といった体質は、「遺伝子分析」により正確に判定できますが、誰でも簡単にできる「エタノール・パッチテスト」という方法もあります。なお、お酒を飲むと顔が赤くなる等の現象を「フラッシング反応」と言い「お酒に弱い人」に特徴的な症状です。

エタノール・パッチテスト

Step1

テープに少量のガーゼを貼り、ガーゼに消毒用アルコール(70%)を染み込ませる。

Step2

上腕部の皮膚のやわらかいところに貼る。

Step3

7分後にテープをはがし、皮膚の色を確認。

Step4

Step3からさらに10分後、もう一度、皮膚の色を確認して反応を見る。

判定結果

貼った部分が赤くなっていれば、「赤型体質」、変化がなければ「白型体質」と判定します。
少量の飲酒で顔の赤くなる赤型の人は、悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する酵素の活性が低いか欠損しているため、アルコールに弱い体質です。

  • 注意点
    • お酒を飲んでいない状態で行う。
    • 安静時に行う。(運動直後は避ける。)
    • エタノールを布の外へはみださせない。
    • 貼った方の手をしめつけない。
    • 貼ったテープの上を押さえない。

【考案者 独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 樋口 進】

  • アルコールに弱い体質 アルコールに強い体質