気候変動の取り組み
気候変動を克服している社会
キリングループは、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議で環境対策について世界に発信した日本企業2社のうちの1社です。早くからGHG排出削減に取り組み、2009年には「1990年比で2050年にバリューチェーン全体でGHG排出量を半減する」という高い目標を掲げました。その後、TCFD提言に基づくシナリオ分析による原料農産物や水といった自然資本への影響も再認識し、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標(SBT)の設定、2040年の使用電力の100%再生可能エネルギー転換、2050年のGHGネットゼロ宣言と目指すべきターゲットを設定してきました。脱炭素社会の実現をリードするために、重視しているのはそのプロセスです。GHG排出削減の取り組みを着実に実施するとともに、自然資本の尊重や容器包装の取り組みを統合的に進めていきます。
主な活動
- 2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロにする長期目標「SBTネットゼロ」認定取得(2022年7月:世界の食品産業で初)「SBT1.5℃」目標の承認取得(2020年)
- 「RE100に加盟して使用電力の再生可能エネルギー比率目標(2040年:100%)を設定(2020年)。RE100の政策ワーキンググループでの活動を通じて再生可能エネルギーの設備容量の拡大等を含む、1.5℃目標達成への提言作成に参画(2024年)
- 購入電力における再生可能エネルギー100%を達成
キリンビール:全工場・全営業拠点(2022年2工場、2023年3工場、2024年4工場・全営業拠点)
協和キリン:高崎工場・宇部工場・研究所等
ライオン:オーストラリア・ニュージーランドの工場と拠点 - 大規模太陽光発電設備を導入
キリンビール:9工場(~2022年:うちPPAモデル購入が8工場)
メルシャン:藤沢工場(2023年)
協和キリン:宇部工場(2023年)
協和発酵バイオ:防府工場(2024年)
ライオン:Castlemaine Perkins(2019年) - キリンサプライチェーン環境プログラムを開始(2024年)
目標と達成状況
GHG排出量削減
2050年 ネットゼロ(環境ビジョン2050)
2030年(2019年比) Scope1+2で50%減、Scope3で30%減(「SBT1.5℃」目標※)
※ 2020年12月に従来の「SBT2℃」目標から上方修正し、「SBT1.5℃」目標として認定されました。
2024年(2019年比) Scope1+2で23%減(非財務目標)
目標
実績
Scope1+Scope2合計排出量
Scope3合計排出量
- リリース:気候変動対策におけるGHG※1中期削減目標が、「SBT(Science Based Targets)1.5℃」の承認を取得
- リリース:2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化を目指してキリングループがRE100に加盟
- リリース:世界の食品企業として初めてSBTネットゼロの認定を取得
- リリース:2022年度CDP気候変動および水セキュリティにおいて最高位の「Aリスト」を獲得
原材料
紅茶農園での気候変動への適応策
キリングループは、スリランカの紅茶農園に対するレインフォレスト・アライアンス認証のトレーニングプログラムを通じて気候変動の適応策に貢献しています。具体的には、斜面に根が深く地を這う草を植えるカバークロップを指導することで、集中豪雨で土壌が侵食され流出し、茶葉生産量が落ちることを防いでいます。
大容量バッグでのワイン輸入
メルシャンは、輸入ワインの一部において、輸入元で酸素透過性の低い24kL(750mlびん換算で約32,000本分)の大容量の専用バッグにワインを詰めて海上輸送し、国内の工場でボトルに詰めています。国内でボトリングすることで、重いボトルを海上輸送する必要がなくなるため、ボトルに詰めた状態で輸入する場合と比べて海上輸送時のGHG排出量を約6割削減することができます。容器としてエコロジーボトル(再生ガラスが90%以上使用されているもの)や、軽量ボトル、PETボトルの利用ができるため、資源の有効活用になるとともに、バリューチェーン全体でGHG排出量を大きく削減することができます。
インラインブロー無菌充填機
以前は空のPETボトルを容器メーカーから購入して搬送し、工場でその中に飲料を充填して製品を製造していました。今はインラインブロー無菌充填機を用いて、工場の製造工程内でプリフォームと呼ばれる素材からPETボトル容器を成型し、無菌状態で充填までを行います。空のPETボトルを搬送する時に比べてトラックが一度に運べる量が増え、GHG排出量を大幅に削減できます。2003年には業界に先駆けてキリンディスティラリーの飲料製造ラインへプリフォーム成型機を導入し、プリフォームの搬送も不要としました。
キリンビバレッジ湘南工場では2021年に、PETボトル成形用高圧コンプレッサーをV型レシプロ式のコンプレッサーからスクリューコンプレッサーおよび水平対向レシプロコンプレッサーのインバータ制御空圧機に切り替え、年間8%程度の使用電力を削減しました。これらの機器では、コンプレッサーの排熱を回収して再利用することも可能です。
上記情報および製品画像は2024年6月末のものです。
再生可能エネルギー
購入電力の再生可能エネルギー比率100% 工場
キリンビールは、仙台工場・名古屋工場で2022年から、福岡工場・岡山工場で2023年1月から、取手工場で2023年4月から、北海道千歳工場・横浜工場・滋賀工場・神戸工場・全営業拠点で2024年1月から、購入する電力を再生可能エネルギー100%にしています。キリンビール全工場・全営業拠点の購入電力が再エネ100%になるとともに、キリンビール全体の使用電力における再エネ比率は66%となります。将来的にはキリングループの事業で使用する全ての電力を再生可能エネルギーに置き換え、早期のRE100達成を目指します。
協和キリンは、日本国内の製造拠点・研究拠点の購入電力の再生可能エネルギー化が完了しました。2020年以降、高崎工場、バイオ生産技術研究所、富士リサーチパーク、CMC研究センターで購入する全電力を再生可能エネルギー100%にし、2023年4月より宇部工場で購入する全電力を再生可能エネルギー100%にしました。これらの取り組みで、協和キリングループ全体で 2023年度末時点でCO2排出量が2019年比55%削減となる見込みです。
2022年1月からは、メルシャンの製造する日本ワイン「シャトー・メルシャン」の全てのワイナリー(シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー、シャトー・メルシャン椀子ワイナリー、シャトー・メルシャン桔梗ヶ原ワイナリー)で、グリーン電力証書を購入電力に組み合わせることで再生可能エネルギー100%を達成しています。
ライオンのオーストラリア・ニュージーランドの醸造所では、2023年1月から購入電力は再生可能エネルギー100%になっています。
大規模太陽光発電の利用
キリングループでは、新たな再生可能エネルギー電源を世の中に創出する「追加性」と、環境負荷や人権に配慮したエネルギーを利用する「倫理性」を重視しています。
キリンビールでは、全9工場に大規模太陽光発電設備の導入(横浜工場を除く8工場がPPAモデル※1)を行いました。
メルシャン藤沢工場においては、PPAモデルによる太陽光発電電力を2023年3月より導入しました。これにより、年間約124tのCO2排出量を削減するとともに、メルシャン全体の使用電力の再生可能エネルギー比率を現状の約5%から約8%に向上させます。
協和キリンは、宇部工場へPPAモデルによる大規模太陽光発電設備(1.47MW)を導入し、2023年3月から稼働開始しました。これにより、年間約 1,029tのCO2排出が削減できる見通しです。
キリングループロジスティクス、協和発酵バイオ、信州ビバレッジでも、敷地や建物の屋根の一部を大規模太陽光発電設備事業会社に賃貸して、自社資産の有効活用と自然エネルギーの普及促進に貢献しています。
- 「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略称で、電気を利用者に売る電力事業者(PPA事業者)と電力の使用者との間で結ぶ「電力販売契約」のことを示します。キリンビールでは、三菱商事エナジーソリューションズ株式会社の子会社であるMCKBエネルギーサービス株式会社がPPA事業者となり、ビール工場の屋根にメガワット級の太陽光発電設備を設置し、その発電電力をキリンビールが購入・活用することで実現しています。
- 「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略称で、電気を利用者に売る電力事業者(PPA事業者)と電力の使用者との間で結ぶ「電力販売契約」のことを示します。キリンビールでは、三菱商事エナジーソリューションズ株式会社の子会社であるMCKBエネルギーサービス株式会社がPPA事業者となり、ビール工場の屋根にメガワット級の太陽光発電設備を設置し、その発電電力をキリンビールが購入・活用することで実現しています。
オーストラリアでの太陽光発電利用
オーストラリアのライオンは、2019年にCastlemaine PerkinsBreweryで太陽光発電設備を設置し、2020年にはビクトリア州にあるLittle Creactures Geelong Breweryにおいても太陽光発電を設置しました。
ニューサウスウェールズ州最大のビール醸造所Tooheys Breweryは、オーストラリアホテル協会(AHA)と共同で再生可能エネルギー販売会社とPPA契約を締結しています。共同で大きな電力契約を結ぶことで、AHAはより安価に再生可能エネルギーを導入することができ、ホテルの料飲店の平均電力単価を11.5c/kWhから6.9c/kWhに削減することができました。
ライオンは、2020年5月にオーストラリア初の大規模なカーボンニュートラル認証取得醸造会社になりました。オーストラリアでカーボンニュートラル認証を取得するためには、年次報告書の中で当該年の総排出量を相殺するためのカーボンクレジットの開示義務があり、ライオンはこれに対応しています。ライオンに認証を提供するClimate Active※2の認証基準はオーストラリアのカーボンニュートラル認証の新しいスタンダードになっています。
ライオンはニュージーランドでも、2021年からToitū※3のカーボンゼロ認証を取得しています。
※2:オーストラリア政府が設立した第三者認証機関
※3:ニュージーランド政府が設立した第三者認証機関
※ リリース:Lion New Zealand Reduces Emissions By 10 Per Cent, Committed To Carbon Zero
再生可能エネルギー証書
協和発酵バイオは、2021年からThai Kyowa Biotechnologies に「再生可能エネルギー証書(I-REC)」を導入しました。タイの医薬品・食品業界での導入は初の事例であり、工場で使用する電力の一部を再生可能エネルギー由来にすることにより、CO2排出量を年間20,249t削減する予定です。協和麒麟(中国)製薬とBioKyowaにも、再生可能エネルギー証書(それぞれI-RECとREC)を導入済みです。
風力発電
三菱商事洋上風力株式会社、株式会社ウェンティ・ジャパン、株式会社シーテック、三菱商事株式会社は、三菱商事エナジーソリューションズ株式会社を代表企業とするコンソーシアム(以下“本コンソーシアム”)を通じて、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖における発電事業者として選定されました。キリンホールディングスは、本コンソーシアムの協力企業です。本事業は一般海域における国内初の着床式洋上風力発電事業であり、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの主力電源化に大きく貢献する国内最大級の電源となります。3事業の最大発電出力は約169万kWで、約121万世帯の電力需要を補える規模です。
- リリース:秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖における洋上風力発電事業者への選定について
- リリース:秋田県由利本荘市沖における洋上風力発電事業者への選定について
- リリース:千葉県銚子市沖における洋上風力発電事業者への選定について
製造
製造工程でのヒートポンプの活用
キリングループは、エネルギー効率を高めてその使用量を減らし、エネルギーミックスを「化石燃料」から「電力」にシフトした上で、再生可能エネルギーでつくられた電力を活用することが最も効果的だと考えています。キリンビールでは、1990年~2015年までの25年間でCO2排出量を約70%も減らしてきました。2019年からキリンビールの6工場の排水処理場にヒートポンプ・システムを導入し、キリンビール全体の排出量の前年比3%(約4,800t)のCO2排出量を削減しています(2023年11月時点)。信州ビバレッジではボトル・キャップのリンス水製造工程において、ヒートポンプを介して直接利用が難しい廃熱を再利用することで、年間約970tのCO2排出量を削減しています。キリンビールの岡山工場では缶の温水殺菌装置における装置内の排熱や空気中の熱を再利用することで、年間約180tのCO2排出量を削減しています。
燃料転換
ビール工場では、使用する燃料の大部分が蒸気を作るボイラーで消費されています。日本では、キリンビールおよびキリンビバレッジの全ての工場、メルシャン八代工場で、重油に比べてCO2排出量が少ない天然ガスへの燃料転換が完了しています。燃料転換にあわせた小型ボイラーの導入により、効率的なボイラー運転も実現しています。熱電供給できるコージェネレーションシステムも導入し、工場の熱と電気の一部をまかなっています。ライオンはニュージーランドの醸造所に電気ボイラ―を設置し、2025年後半からの稼働を予定しています。現行のLPG燃料の代替により、年間約700tのCO(2 ライオンのニュージーランドでのScope1+2の6%に相当)の排出削減が可能です。
冷凍システムの効率改善
キリンビールでは、温度差が大きい工程では段階的に冷却を行うカスケード冷却システムを導入するとともに、冷却システムの運転改善などにより冷凍システムの効率を改善し、省エネルギーに取り組んでいます。
容器包装
容器の軽量化によるGHG排出量削減
容器の軽量化は、容器包装を製造するためのGHG排出量や輸送時の積載効率向上によるGHG排出量の削減につながります。キリンビールとキリンビバレッジの容器包装の軽量化による容器製造のCO2排出削減量は、1990年から2023年までの累計で533万t※1になりました。
- 1990年から2023年までの間で1990年と各年度の容器重量差に当該年の容器使用量を乗じた累計に対してカーボンフットプリント製品種別基準(認定 CFP-PCR 番号:PA-BV-02)を適用して算出。
商品写真は2024年6月現在時点または事象発生時点のものです。
物流
共同配送やモーダルシフトを進めています
キリングループでは物流分野を非競争分野として位置付け、積極的に他社との協働を進めています。2017年から石川県金沢市にアサヒビール社と共同配送センターを開設し、関西エリアの工場からの鉄道コンテナによる共同輸送を行っています。どちらの会社も日本海側には工場を持っておらず、太平洋側の工場から200kmを超える長距離をトラック輸送していましたが、効率が悪く、運転手にも大きな負担をかけていました。鉄道コンテナを使った共同輸送によりCO2排出量を大幅に削減できるだけではなく、工場とターミナル、ターミナルと輸送先の距離が短くなり、トラック運転手の負担も大幅に削減し、トラック運転手不足という社会課題の解決にもつながっています。この取り組みにより、年間1万台相当の長距離トラック輸送を鉄道コンテナにモーダルシフトし、CO2排出量が年間約2,700t削減できると試算しています。
2017年9月からは、アサヒビール、サントリー、サッポロビールと4社で北海道の道東エリアで共同配送を開始しています。この取り組みにより鉄道コンテナが活用され、トラックの積載効率の向上による物流が効率化し、年間約330t※1のCO2排出量削減に貢献していると試算しています。協和キリングループでも物流拠点間の製品輸送において、共同輸送を実施しています。2020年から、宇部工場は原料調達において、鉄道コンテナ輸送を開始しています。キリングループでは、400~500km以上の長距離輸送を中心に、CO2排出量の少ない貨物鉄道輸送や船舶を積極的に使うモーダルシフトに取り組んでいます。2024年4月から、キリングループロジスティクス・JR貨物・日本通運の3社で年間約8万4千t(10t車で7千台分、5tコンテナ換算で約1万7千個分に相当)のキリングループ製品のモーダルシフトをしています。これにより年間約3,130tCO2の排出を削減できる見込みです。
- 一般社団法人 日本経済団体連合会「グローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献第5版」 https://www.keidanren.or.jp/policy/vape/gvc2018.pdf
門前倉庫を活用しています
門前倉庫の活用により、長距離輸送の削減が可能となります。その結果、GHG排出を抑制し、より持続可能なサプライチェーンの構築に貢献します。トラックが確保できないことによる運べないリスクの軽減と輸送効率の最適化を目指し、2019年10月より、キリンビバレッジ自社工場である湘南工場、滋賀工場に近接した原料倉庫「門前倉庫」を活用した原材料調達物流の試験運用を開始しました。門前倉庫の設定により、原材料サプライヤーは運びたい量を運びたいときに輸送し、最大限の効率化を図ることができます。急な製造計画の変更にも対処しやすくなり、製造工場の対応力が格段に向上しました。
販売
業界に先駆けて「ヒートポンプ式自動販売機」を導入・グリーン電力自動販売機の展開も
キリンビバレッジでは、業界に先駆けて「ヒートポンプ式自動販売機」の導入を2006年より開始し、2012年からは新規導入するほぼ全ての缶・PETボトル自動販売機を「ヒートポンプ式自動販売機」に切り替えました。2024年3月現在、設置自動販売機の90%以上が切り替わっています。
「ヒートポンプ式自動販売機」は、商品を冷やす時に出る「廃熱」を汲み上げて商品を温める時の「加温」に活用し、ヒーター電力を抑制することで従来の自動販売機より消費電力量を低減することができます。一部のタイプは従来の冷却個室から出る「廃熱」だけでなく、「庫外の熱」を奪って加温する機能を併せ持つことや真空断熱材の多用による保冷・保温能力の向上により、省エネ性能を高めています。これらにより、2013年比で約40%の消費電力量を削減できるまで進化しています。2015年から最新モデルの導入を開始し、2024年には新規導入する自動販売機のうち約90%の投入を目指しています。
さらに、2024年1月より、Scope3排出量の削減となるグリーン電力自動販売機を展開しています。稼働に必要な年間消費電力量に相当するグリーン電力証書を取得することで、CO2排出量を実質ゼロにする取り組みです。
カーボンニュートラルビール
ライオンがニュージーランドで発売しているSteinlagerは、ニュージーランドの政府機関によるToitūプログラムからカーボン・ゼロ・ビール※と認証されています。2021年には、マーケティングキャンペーンでToitūのカーボンゼロマークを取り上げることで、ライオンがSteinlagerなどを通じてGHG削減に取り組んでいることをお客様にアピールしました。
2022年5月、ライオンはオーストラリア初のカーボンニュートラルでかつアルコールフリービールである「XXXX Zero」を発売しました。XXXX Zeroは、カーボンニュートラル認証であるClimate Active認証を取得しています。ライオンはオーストラリアで、主要製品の多くについて、Climate Activeを通じたカーボンニュートラル認証の準備を進めています。認証を取得するには、原材料や包装、流通、製品の廃棄物からの排出を含む、製品の全ライフサイクルのGHG排出量をゼロにすることが求められており、その対応を進めています。ニュー・ベルジャン・ブルーイングでは、2020年にFAT TIRE ALEを米国で初めてカーボンニュートラルビール化しました。購入・償却しているカーボンクレジットは、農家が環境再生型農業へ転換することへの経済支援にもつながっています。また、気候変動が進むとビールの未来はどのようになるかを消費者に提示するために、2021年にTORCHED EARTH ALEというビールを作りました。気候変動が進んだ未来に、入手可能と考えられる原料から作ったビールの味を示すことで、気候変動に対するアクションを起こすことの重要性を喚起しています。
- カーボンニュートラルビールのことを、認証上の名称に合わせて「カーボン・ゼロ・ビール」と表記しています
サプライチェーン全体
取引先との連携
GHGプロトコル「Scope3基準」のカテゴリーのうち、キリングループのScope3排出量の約70%を占めるカテゴリー1(原料・資材の製造)、次に排出割合の大きいカテゴリー4(輸送)、カテゴリー9(販売)を重点取組領域に設定し、「取引先の削減促進」と「自社主体の削減」において、エンゲージメントと協働を重視しながらバリューチェーン全体での排出削減を進めます。
これまでも全サプライヤーに対して気候変動への取り組みを盛り込んだ「キリングループ持続可能なサプライヤー規範」の遵守の依頼をしてきており、更に2024年4月からはサプライチェーン環境プログラムを開始しました。これによりGHG排出量の多い取引先との協働を強化し、GHGの実排出量データの相互開示・SBT水準のGHG排出量削減目標設定依頼と支援・GHG排出量削減に向けた協働、の3つを軸にScope3の削減を推進します。本取り組みは、当社の中期目標「2030年までに2019年比でグループ全体のGHG Scope3排出量を30%削減」のうち、1/3に当たる10%の削減に寄与すると想定しています。
ライオンはオーストラリア企業CEOのグループであるAustralianClimate Leaders Coalitionに参画しています。このグループでは、サプライヤーや小売り企業等のバリューチェーン企業同士でGHG排出量の実績値を相互に開示することが様々な理由で難しいという課題に対して、実績値を相互非開示で第三者機関にプールする仕組みを使うことで、より正確なScope3排出量の把握ができることを確認しています。この取り組みは関係者間でどのようにバリューチェーンでの排出量を減らしていくべきか検討する協働のきっかけとなり、Scope3の削減目標を高め、実効性の高いアクションにつながります。また、製品当たりCFPの算定を通して、サプライチェーン全体でのGHG削減状況の見える化・目標設定に活用しています。
これらアプローチは「Australian Climate Leaders Coalitoin」の出版物「Scope3 Roadmap」に記載されています。