[食領域]
メルシャン椀子(マリコ)ヴィンヤードの中で希少種を発見。従業員参加で保全活動も開始しました
- 環境
2016年11月24日
メルシャンの椀子(マリコ)ヴィンヤード(長野県上田市陣場台地)は、かつて大半が遊休農地であったところをブドウ畑として造成した約20haに及ぶ広大な自社管理ブドウ畑です。
農研機構・農業環境変動研究センターの研究員の方々を招聘して行っている生態系調査において、今年、ブドウ畑の中で希少な植生を見つけることができました。 これを受け、10月には従業員参加による希少種を含む在来植物をブドウ畑の中で再生・保全する活動を開始しています。
何故、ブドウ畑の中で希少な植生が見つかったのでしょうか?
それは、椀子(マリコ)ヴィンヤードの垣根栽培のブドウ畑が広大な草原でもあるからです。
130年前には日本国土の30%を占めていたという草原ですが、今は国土の1%以下にまで減少しているといわれています。垣根栽培のブドウ畑の場合、地面は牧草や在来種のイネ科植物でおおわれていますが、必要に応じて年に数度下草刈りを行います。この下草刈りにより、強い外来種だけに覆われてしまうことを防ぎ、草原性の在来種や希少種にも日が当たることになり、ブドウ畑の草原の中で生育することが可能になるのです。 つまり、ブドウを栽培することは、里地里山の草原を守り、その中で希少種を守ることにつながっていると言えます。
調査結果ですが、全体で258種の野生植物と30種の植栽種を確認することができました。
国レベルの絶滅危惧植物であるスズサイコ、国レベルでの絶滅が心配される蝶類のオオルリシジミやオオムラサキの食草として機能しているクララ、エノキが成育しています。また、カワラナデシコ、メハジキ、キスゲなどの希少種も見つかっています。さらには、質の高いススキ型草原の指標種であるワレモコウ、アキカラマツ、ツリガネニンジンも確認されていることから、ヴィンヤードには生物多様性の高い良質な草原が存在し、ワイン生産により守られている里地里山の自然環境であると言えそうです。
ブドウ畑の中での希少な植生の発見を受け、今年の秋からブドウ畑の中で従業員参加による希少種を含む在来植物の再生・保全活動を開始しました。
専門家の指導を受けて、ブドウ畑及びその周辺で見つかった前述の希少種と代表的な草原の在来種が生育していた場所の植物の一部を秋に刈取り、ブドウ畑の中の再生予定地に敷きます。これにより種が散布されて、上手くいけば、ブドウ畑の中で昆虫たちが捕食や移動に利用するビートルバンクと呼ばれる緑地帯として機能し、椀子(マリコ)ヴィンヤードがより生態系豊かなブドウ畑になることを期待しています。
植生再生は国立公園や多様性が豊かな河川堤防などでの事例はありますが、生産の場である畑の中で実施するのは日本で初めてと考えられます。
私たちは今後も、ワインの生産を通じて豊かな里山の自然環境を後世に残していきたいと思います。
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