[食領域]
生産地の紅茶農園訪問も今年で5回目。今回は小農園と茶園の中にある水源地の現地確認を行いました
- 環境
2018年03月19日
キリンは、紅茶農園が自然や人権に配慮しながら継続的に紅茶葉を生産できるように、2013年から「キリンフレンドシッププロジェクト」の一環として、スリランカの紅茶農園が持続可能な農園認証制度であるレインフォレスト・アライアンス認証を取得する支援を行っています。2017年末で、スリランカの調達先農園の中に占める持続性の高い農園数比率は約50%※まで高まってきました。
2018年からは、1)小農園の認証取得支援、2)紅茶農園の中の水源地保全活動を開始しています。
今回の訪問は、その現地確認が目的です。スリランカの主な茶葉生産地域であるウバ、ヌワラエリア、ディンブラ、キャンディーを1週間掛けて回ってきました。
1)小農園の認証取得支援
ヌワラエリアとディンブラの小農園を訪問してきました。
この地域では、大きな農園の周りにたくさんの小農園が取り囲むように存在しています。1つ1つの小農園の面積は小さく、スリランカの平均では30アール(イメージとしては約50m×60m)程度であり、家族で運営しています。ただし、茶畑が狭いために茶葉栽培だけでは十分な収入を得ることが難しく、一般的には野菜などの他の作物も育てて生計をたてています。
茶葉は、行政から正式に許可を得た「コレクター」と呼ばれる人たちが小農園から集め、大農園の工場へ持ち込む仕組みになっています。小農園は大農園にとっても重要な茶葉の供給元なのです。
今回訪問したヌワラエリアでは、このコレクターが認証取得に向けて約160の小農園を組織化する手伝いを行っていました。現地ではNGOがトレーナーを増員し、これから小農園のトレーニングを本格化させていく予定です。
ウバの小農園では、レインフォレスト・アライアンス認証の規定に従い、野生動物を保護していました。農園の中でスリランカの国鳥である野生のジャングル・フォウルを見ることができました。
農園で出会った女の子と茶摘みさん。
今回訪問したヌワラエリアの小農園はコレクターの仕事も兼ねており、家の前には許可証が掲示されていました。小農園が認証を取得すれば、持続可能な紅茶葉生産が拡大します。
2)紅茶農園の中の水源地保全活動
ウバとディンブラの紅茶農園の中にある水源地を訪問してきました。
高地にある紅茶農園では、急斜面に茶の木が植えられている場所がたくさんあります。そのような場所では、雨が降っても斜面を流れ落ちてしまうため、原生林で覆われている山と比べると涵養機能は高くないと言われています。しかし、地層などの条件が良いところでは、山頂付近や紅茶農園に降った雨が地中に浸透した後に湧き出てきて、小川を作るような場所があります。水の湧き出ている場所をマイクロ・ウォーターシェッドと呼び、それが一か所にたくさん集まっている場所をウォーターシェッドと呼びます。
原生林の中にあるウォーターシェッドは問題ないのですが、紅茶農園のように人が住んでいる場所の近くでは、野菜の栽培や牧草地に使われるなどして汚染の危機に瀕しています。
今回の取り組みでは、このウォーターシェッドを他の目的に使用されないように柵で囲んで保全します。また、単一栽培の紅茶農園に植生の多様性を与える目的で、その地域固有の在来種の木を周りに植林する予定です。これは、集中豪雨などの時に山の斜面から流出した土砂が中に流れ込まないようにする役割も果たします。
紅茶農園にあるウォーターシェッドはスリランカの中心部の高地にあり、殆どの場合はいずれかの河川の源流になっているために、面積は僅かですが貴重な水源地となっています。まずは、5か所のウォーターシェッドを識別し、保護していく予定です。
ウバにあるマイクロ・ウォーターシェッドを訪問しました。右下の写真で茶色く見えるのは、集中豪雨の時に流入してきた土砂です。このようなことを防ぐためにマイクロ・ウォーターシェッドの周りに在来の木を植えて、土砂が流入するのを防ぐ予定です。
野菜畑や牧草地などに転用されるのを防ぐために柵で囲んで保全します。ここでは不要になった木製の電柱を柵の材料に使う予定です。
ディンブラにあるマイクロ・ウォーターシェッドも訪問しました。乾季に薪を取るためにマイクロ・ウォーターシェッドに植わっている木を切ってしまう人がいるので、ここも柵で囲んで保全します。
マイクロ・ウォーターシェッドは美しい紅茶農園の中にあります。マイクロ・ウォーターシェッドの下流にあり、農園の子供たちが通う小学校で、水源の大切さを学ぶ教育プログラムを開始する予定です。
スリランカの紅茶農園を訪れると、いつも子供たちの笑顔に癒されます。左下が農園のマネージャー(左)、右下はその息子さんです。
- 「持続性の高い農園」には、キリンの支援で認証取得した農園の他に、独自または他の国際機関等の支援を受けて認証を取得した農園が含まれます。
※所属(内容)は掲載当時のものになります。