[食領域]
椀子ヴィンヤードでNGOとともに植生調査とクララを増やすための活動を行いました
- 環境
2019年07月11日
長野県上田市丸子地区陣場台地の椀子ヴィンヤードでは、2014年から農研機構との共同研究の調査により、昆虫168種、植物288種を確認し、国レベルの希少種も発見されています。
垣根栽培で草生栽培のブドウ畑では下草を生やす必要があり年に数回下草刈りを行います。このことでブドウ畑が広大で良質な草原として機能し、多様な生きものを育んでいると考えられています。
6月8日には、椀子ヴィンヤードの生態系が年々豊かになっているという仮説を確認するために、その指標として畑の中のスミレ類の分布状態を調べました。また、畑でクララを増やす活動も開始しました。クララは「根に毒があるのでかじるとクラクラする」ということから名前が付いた植物で、絶滅危惧種オオルリシジミの唯一の食草です。
今回の活動は、国際NGOアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さんに参加いただきました。
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まずは、春の植生調査で新たに見つかった希少種メハジキ※と思われる個体の確認です。
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今は小さい苗ですが、成長すると50~100cmに成長します。
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今回新たに、畑周辺でアヤメが見つかりました。
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花が咲かないと確認ができませんが、春の調査では希少種キスゲ※の株と思われるものも見つかっています。
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畑の中にあるクララです。
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成長すると、こんなに大きくなります。
- メハジキ、キスゲ(ユウスゲ)は、長野県のレッドリストで準絶滅危惧種。
スミレ類は「アリ散布」という珍しい方法で広がっていきます。スミレ類の種にはエライオソームと呼ばれる独特の器官がついていて、アリはここから発する匂いに誘われて巣に運びます。甘い部分を食べると不要になり巣から外に出してしまいますが、その場所が草原性の生態系の豊かな場所であればここで芽を出します。そのため、スミレ類は良質な草原の指標となります。
今回の調査では、スミレ類が畑周辺のみならず、かなり中心部に入り込んでいる様子が確認できました。数年後に同じ調査を行うことで、ブドウ畑の生態系がどの程度豊かになったかを確認することができます。
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これが調査対象のスミレ類です。既に花は終わっていました。
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葉っぱの形に特徴があるので、それを手掛かりに探していきます。
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最初は、他の草と区別がつかず大変です。
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徐々に目が慣れてきて、発見するスピードも上がっていきます。
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見つけると、株数を確認し、スマホで緯度経度を調べます。
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その結果をメモに記録していきます。
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昼からは晴れ間がのぞいてきました。
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熱心に調査が続きます。
夕方近くになってから、クララを増やす活動を行いました。クララはマメ科の植物なので、挿し木が可能です。また、昨年、同じくアースウォッチ・ジャパンとそのボランティアの皆さんとともに行った調査で、椀子ヴィンヤード南側の田の畔に比較的たくさんのクララが生息していることが分かりました。狭い台地の上なので、このクララは遺伝的に畑のクララと同じであると見なせます。そこで、今回は市や地域の方々の許可を得たうえで畔のクララから挿し穂を取り、挿し木で育てることにしました。ボランティアの皆さんが、それぞれ2~3穂程度を持ち帰り、約1年間、ご自宅で育てていただきます。うまく育ったら、来年の春に椀子ヴィンヤードの植生再生場所に植える予定です。
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クララが生息している畦まで15分ほど歩きます。
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まずは、農研機構の先生から、クララの穂のカット方法を教示していただきます。
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さっそく挿し穂取りに挑戦。一人2~3穂確保していきます。
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クララは強いので、先端をカットしても生育に影響はありません。
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カットした部分を濡れた紙で巻いて自宅まで持ち帰ります。
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家に帰ったら、鉢に挿して育てます。
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草原性のウラギンヒョウモンも見られました。東京都、神奈川県、千葉県で絶滅危惧種相当となっています。
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9月にはワイナリーもオープンします。楽しみですね。
参考
※所属(内容)は掲載当時のものになります。