[食領域]
椀子ヴィンヤードの植生再生地は自然のお花畑のような景色になりつつあります
- 環境
2019年10月31日
長野県上田市丸子地区陣場台地にあるメルシャン自社管理ブドウ畑椀子(マリコ)ヴィンヤードの一角では、2016年から毎年キリングループの従業員による希少種・在来種の植生再生活動を行っています。
これは、2014年からのブドウ畑の中の生態系調査で、希少種※1を含む288種の植物を確認したことを受けて開始したものです。
毎年の調査で良質な草原を代表する在来種が年々増えていることを確認していますが、今年はさらに定着が進み、きれいな花も咲いて自然のお花畑のような景色になりつつあることが確認できました。
きれいな花を咲かせているのはノコンギクです。日本の草原でよくみられる在来種の花ですが、元々はこの場所にはなかったものが定着して繁殖したものと考えられます。
椀子ヴィンヤードで行っている植生再生活動は、希少種や在来種の種を含む枯草をブドウ畑の中の良質な草原を形成している場所から譲り受けて植生再生場所に捲く、というシンプルな方法を使っています。植物を移植してしまうと元の場所の自然を毀損してしまいますが、この方法であれば元の自然を守りながら希少種や在来種を増やすことができます。再生場所はヴィンヤードの中の傾斜地など、ブドウの木の植樹に適さない場所を使っています。
今年は台風の影響で当初予定していた従業員参加での活動は行えませんでしたが、農研機構の研究者と担当者で実施しました。来年以降での定着を目指し、ヴィンヤード内で見つかった希少種のメハジキやヴィンヤード近隣で見られるきれいな花を咲かすカワラナデシコやツリガネニンジン、クララの種や種を含む枯草も捲いてみました。
以下は、定着が確認できた良質な草原を代表する在来種の一部です
椀子ヴィンヤードでは2014年から植物と昆虫の調査を実施してきましたが、2019年からは新たに鳥や節足動物、土壌生物の調査も開始し、長野県初記録となるクモも発見されています。
ヨーロッパでは、ヴィンヤードの自然環境は『植物・蝶・鳥』で評価されます。今後、多様な生きものを調べることで、この地域の自然の豊かさをさらに明らかにするとともに、草生栽培による生態系の豊かさがブドウ栽培に及ぼす良い面の評価にもつなげていくことを期待しています。
- 椀子ヴィンヤードで発見された希少種は以下の通りです。
ウラギンスジヒョウモンは環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(長野県の準絶滅危惧種)、ベニモンマダラは環境省と長野県のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。メハジキ、ユウスゲ(キスゲ)は長野県のレッドリストで準絶滅危惧種、スズサイコは環境省ならびに長野県のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。クララは環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類(長野県の絶滅危惧ⅠB類)であるオオルリシジミの唯一の食草。
- これらの写真は長野県初記録のクモとは異なります。
※所属(内容)は掲載当時のものになります。