[ヘルスサイエンス領域]

~新型コロナウイルスの医薬品開発を推進するAMED事業の研究~

「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」による新型コロナウイルス増殖抑制メカニズムを試験管内試験で確認

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  • 研究・技術

2022年11月29日

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎 功典、以下、キリン)のキリン中央研究所(所長 矢島宏昭)は、国立感染症研究所のエイズ研究センター(センター長 俣野 哲朗)との共同研究で、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」(以下、プラズマ乳酸菌)※1の作用による、新型コロナウイルスの増殖抑制効果を確認※2し、その作用メカニズムを解析しました。この成果は、2022年11月13日(日)~11月15日(火)に開催された、第69回日本ウイルス学会学術集会で発表しました。
これは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の令和4年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」に採択された研究となります。
※1 国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンターが所有するLactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805のこと。
※2 ニュースリリース(2021年12月13日)キリンホールディングスと国立感染症研究所の共同研究により、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」の作用によって新型コロナウイルスの複製増殖を低下させることを確認(試験管内試験)
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2021/1213_01.html

研究成果 概要

プラズマ乳酸菌がヒトのプラズマサイトイド樹状細胞(以下、pDC)※3を直接活性化させることで、抗ウイルス因子「インターフェロンアルファ(以下、IFN-α)」の産出を促すことを試験管内試験で確認しました。また、試験用細胞を用いた解析により、プラズマ乳酸菌は複数のウイルスの増殖を阻害する機能が知られている抗ウイルス遺伝子の発現を増加させることによって、新型コロナウイルスの細胞内での増殖を抑制することを試験管内試験で確認しました。
※3 生体内でウイルス感染防御を専門的に担っている免疫細胞の一種で、他の免疫細胞と比較してI型インターフェロンの産生能が高い。

  • プラズマ乳酸菌によって活性化したpDCによる新型コロナウイルス増殖抑制に関する想定メカニズム

キリンと国立感染症研究所は、プラズマ乳酸菌が新型コロナウイルス感染症に与える影響について、今後もさらなる共同研究を展開していきます。

キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。

プラズマ乳酸菌の新型コロナウイルスへの効果について

新型コロナウイルスの増殖抑制効果

プラズマ乳酸菌で活性化したヒトのpDC※4から発生した成分を、試験用細胞※5へ加えて培養した後、新型コロナウイルス※6を感染させ、3日間ウイルス量を定量PCR法※7で測定した結果、新型コロナウイルスのウイルス量が大幅に低下することを確認しました(図1)。

  • 図1 プラズマ乳酸菌によって活性化したpDCによる新型コロナウイルス増殖抑制効果

新型コロナウイルスへの効果に関するメカニズム解析

プラズマ乳酸菌による新型コロナウイルスへの効果に関するメカニズムを解明するため、以下の試験を行いました。

プラズマ乳酸菌によってヒトpDCから発生する成分について

プラズマ乳酸菌をヒトのpDCに添加し、そこから発生した成分を調べたところ、プラズマ乳酸菌を添加しなかった場合と比べ、IFN-αの産生が促進されることを確認しました(図2)。

  • 図2 ヒトpDCにプラズマ乳酸菌を添加した際に産生されたIFN-α量

プラズマ乳酸菌によって活性化したpDCによる抗ウイルス遺伝子発現増加について

次に、プラズマ乳酸菌で活性化したヒトのpDCから発生した成分を、試験用細胞※5へ加えたところ、IFN-αの作用によって誘導されることに加え、ウイルスの増殖を阻害する機能が知られているISG15など複数の抗ウイルス遺伝子※8の発現が増加していることを確認しました(図3)。

  • 図3 プラズマ乳酸菌によって活性したpDCによる細胞へのウイルス増殖抑制に関する抗ウイルス遺伝子の発現

新型コロナウイルス増殖抑制の試験結果を踏まえると、プラズマ乳酸菌がpDCを活性化させることでIFN-αが産生され、その作用により細胞における抗ウイルス遺伝子の発現が増加した結果、新型コロナウイルスの増殖抑制につながっていることが示唆されました。

※4 ヒト末梢血単核細胞から分離
※5 新型コロナウイルスに感染しやすい、アフリカミドリザルの正常腎臓由来細胞株(Vero細胞)。新型コロナウイルスが効率的に複製増殖するため、ウイルスの増殖評価や分離に用いられる
※6 新型コロナウイルス(WK-521株:国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスのオリジナル株)
※7 定量PCR法:ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) を用いて、サンプル中の特定配列のDNAを増幅し、そのDNA量を測定する方法
※8 ウイルスに対抗する物質を細胞が作り出せる能力を示す指標。各発現遺伝子の特長は以下の通り。
ISG15:インフルエンザやヘルペスウイルスの増殖を抑制、 RSAD2:インフルエンザやHIVなどのウイルスの増殖を抑制
OAS1:新型コロナウイルスの分解を促進、 MxA:インフルエンザ、麻疹、B型肝炎などへの抗ウイルス作用

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