キリンと日立、森林由来カーボン・クレジットの創出に向け、共同研究を開始

~キリンの「植物大量増殖技術」と日立の「自然計測技術とMRVに関するデジタル技術」でGHGの削減と生物多様性の保全を両立~

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2025年3月24日

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(社長 COO 南方健志、以下キリン)と株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO 小島啓二、以下日立)は、森林由来によるカーボン・クレジット※1の創出に向けた共同研究契約を2025年3月に締結しました。キリンの「植物大量増殖技術」と、日立が持つ「自然計測技術とMRV※2に関連するデジタル技術」の活用により、質の高い森林由来カーボン・クレジットの創出を目指すとともに、植林地の保護によるGHG※3削減と生物多様性保全の両立を図ります。これにより、脱炭素社会の実現と自然環境の保全に貢献します。
※1 GHGの排出削減量を取引できる仕組みのこと
※2 Measurement, Reporting and Verification の略で「GHG排出量・吸収量の測定、報告及び検証」
環境省 温室効果ガス排出量算定・報告・検証情報ライブラリー MRVライブラリー
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/mrv-library/1.whats_mrv.html#:~:text=MRV%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81Measurement%2C%20Reporting,%E3%82%92%E6%8A%8A%E6%8F%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
※3 Greenhouse Gasの略で温室効果ガスのこと

背景

UNEP(国連環境計画)が公表する「Emissions Gap Report 2023」によると、2022年の世界のGHG総排出量はおよそ574億トンとなり過去最高値を記録しています※4。大気中のGHG削減に寄与する森林の総炭素吸収量は日本国内でも減少傾向にあり※5、その原因の一つとして森林の高齢化による木々の成長の鈍化が考えられていることから、脱炭素社会への移行には森林の炭素固定能力の最大化が求められています。また昨今、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)※6のフレームワークに沿って「自社の事業が自然環境に及ぼす影響」などの情報を開示する動きが広がり、脱炭素と生物多様性保全を両立する取り組みが求められています。こうした背景からキリンと日立は森林由来カーボン・クレジットに着目し、社会課題の解決に向けた共同研究を開始しました。
※4 環境省「令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」より https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r06/html/hj24010203.html
※5 環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」より https://www.env.go.jp/content/000216815.pdfPDF:1,324KB
※6 自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)。民間企業等が、自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するためのフレームワークを構築する国際的な組織。

課題

森林由来カーボン・クレジットの分野では、適切なMRVが行われていない「ジャンク・クレジット」※7の問題が指摘されており、信頼性の高い森林由来カーボン・クレジットの需要が高まっています。また、クレジット申請の手続きが複雑であることから、効率的で透明性の高い森林管理とクレジットの創出が求められています。
さらに、適切な森林管理の一つである苗木生産に関しては、生産事業者の高齢化が進行しており、事業者数が1,000を切る状況が10年以上続いています※8。また従来の接ぎ木、挿し木で苗木を増殖するには長期間を要するため、より効率的な苗木の生産技術の開発が急務とされています。
※7 GHG削減の効果に不確実性があるカーボン・クレジットのこと
※8 林野庁 苗木生産事業の現状 https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/syubyou/syubyou.html
「経営形態別苗木生産事業者数及び育苗面積の推移」 2012年~2022年 https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/syubyou/attach/pdf/syubyou-48.pdfPDF:105KB

共同研究の概要

キリンの保有する「植物大量増殖技術」と、日立の保有する「自然計測技術とMRVに関連するデジタル技術」を融合させることで、質の高い森林由来のカーボン・クレジットの創出と、生物多様性の保全をめざし、2025年3月に共同研究契約を締結しました。キリンは「植物大量増殖技術」で従来の接ぎ木、挿し木技術よりも短期間で効率的に生産できる苗木生産方法を確立します。日立は「自然計測技術とMRVに関連するデジタル技術」を活用し、炭素固定量の定量評価手法の開発や、改変不可能なデータベースの構築および申請レポートの自動作成に取り組みます。今後、実際のフィールドを用いた炭素固定量および生物多様性の評価を行う実証試験の計画策定を開始します。

質の高い森林由来クレジット創出に向け活用する技術と役割

キリン 日立
活用する技術 ・アグリバイオ事業の経験で培われた「植物大量増殖技術」※9,10 ・自然計測技術、ブロックチェーンなどを活用した、環境配慮型プロジェクトのMRVに関するデジタル技術※11
役割 ・苗木の効率的な生産法(増殖法)の開発
・生物多様性の評価方法の検討
・森林由来カーボン・クレジット創出に向けた炭素固定量の定量評価手法とデジタルシステムの開発
・生物多様性の評価方法の検討

質の高いクレジット創出に向けた仕組み

※9 KIRINの研究開発 「種イモ生産から宇宙農場まで!さまざまな分野で注目が高まるキリンの「植物大量増殖技術」
https://rd.kirinholdings.com/domain/result/story_014.html
※10 KIRINの研究開発 「クロマツの苗木を大量につくる技術を開発し、東北被災地の海岸防災林再生に貢献」
https://rd.kirinholdings.com/domain/result/report_021.html
※11 日立 2023年10月30日 ニュースリリース「環境省が推進するJ-クレジットのデジタル化に向けて、本格的に実証を開始」
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/10/1030a.html

今後の展望

キリンと日立は、両社の強みを生かした共同研究テーマを推進し、高品質な森林由来カーボン・クレジットを創出することで、生物多様性の保全や森林事業者への貢献およびGHGの削減(脱炭素化の推進)や地球環境の改善など、さまざまな社会課題の同時解決を目指します。
また、実証試験の実施に向けた活動を推進するとともに、実証試験や社会実装に向けた連携パートナーの探索も進めてまいります。

キリングループは「キリングループ環境ビジョン2050」で気候変動課題の克服と脱炭素社会の構築を目指し、バリューチェーン全体のGHG排出量を2050年までにネットゼロにすることだけでなく、バリューチェーンを超えた脱炭素社会への貢献を目標としています。キリンの持つ植物大量増殖技術を使い森林を維持しながら、カーボン・クレジットの創出と気候変動の両面に取り組んでいきます。(2025年3月24日 当社リリース カーボンクレジット方針 https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2025/0324_02.html
日立は、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」に基づいて、2050年度までのカーボンニュートラル達成に向けた取り組みを推進します。さらに社会イノベーション事業を通じて地球規模の環境課題解決をリードし、地球環境の保全とQuality of Life(QoL)が両立する持続可能な社会の実現に貢献していきます。

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