「日本を世界の銘醸地に」を目指して 自然・地域・未来と共生しながら歩み続ける日本ワイン事業

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2023年03月03日

  • 「日本を世界の銘醸地に」を目指して 自然・地域・未来と共生しながら歩み続ける日本ワイン事業

メルシャンの日本ワイン事業「シャトー・メルシャン」。現代日本ワインの父と称される、勝沼ワイナリー(現シャトー・メルシャン)工場長であった浅井昭吾の哲学を背景に持ちながら、「自然・地域・未来との共生」をキーワードに自社のみならず日本ワイン産業全体の発展に努めてきました。

ヴィジョン「日本を世界の銘醸地に」を目指し、産地とともに成長するシャトー・メルシャンの活動と未来への展望をお届けします。

「日本を世界の銘醸地に」を体現する企業DNA

日本ワインが、日本と、世界中の人たちに愛されて親しまれる日がくるように。シャトー・メルシャンは、その想いを表す「日本を世界の銘醸地に」というヴィジョンのもと、145年にわたり日本ワインの発展に邁進してきました。

このヴィジョンの背景には、勝沼ワイナリー(現シャトー・メルシャン)工場長であった浅井昭吾の、「ワイン文化とワイン産業は産地全体で発展させなければならない」という哲学と熱意があります。

象徴的なエピソードとして挙げられるのが、甲州ワインにおける「シュール・リー製法」の普及です。これはフランスのロワール地方発祥の製法で、白ワインの製造工程では通常、オリのにおいがワインに移ることを防ぐため、熟成の段階で樽やタンクの下に沈んだオリを除去する作業を行いますが、健全できれいなオリを取り除かず、翌春まで共に低温熟成させるのです。低温熟成によってオリは次第に分解され、アミノ酸などを生成。これらの成分がワインに溶け込み、味わいに深みや幅を与えます。この知見を得たメルシャンは1983年、甲州のワイン造りにて、シュー・リー製法に挑戦。すると、それまで個性に乏しいと言われていた甲州ワインが、飲み応えがありながらもキリッと辛口のワインに生まれ変わったのです。シュール・リー製法の甲州ワインは、当時の国内で大ヒット。ここで浅井は甲州ワインのさらなる興隆のため、1985年にこの企業秘密とも言える製法を、勝沼の他のワイナリーに無償で公開しました。
テロワールによって味わいが決定づけられるワインは、ブドウの産地全体が評価されてこそより高く価値を認められるもの。技術を独占するよりも、日本におけるワインの製造技術を高めることに重きを置いたのです。

産地全体で、将来にわたって発展していく――根底に流れるこの哲学は、現在の地域とのかかわり方にも表れています。

「地域との共生」浅井の時代からの同志と共に 日本ワイン源流の地 勝沼

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーは、日本ワインの代表的産地として認知されている山梨県甲州市にあります。メルシャンの源流ともいえる日本初の民間ワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」創立の地でもあり、ここから日本ワインの歴史が幕を開けたのです。

日本ワインの出発点ともいえるこの地では、毎年秋の収穫時期にあわせて、日本ワインの魅力を発信するイベント“シャトー・メルシャン ハーベスト・フェスティバル”を開催してきました。日本ワインが国内でもっと愛され親しまれること、お客様と共に日本ワインの魅力を発見し、魅力を広めていくことを目的に1974年より始まったこの取り組みは、「産地と共生し、産地を盛り上げる」ことを目指し、近年は“シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル”(通称“勝フェス”)として他ワイナリーと協業して開催しています。

この地には、浅井の影響を受けその哲学に共鳴する生産者の方が多くいます。“勝フェス”は、日本ワインを広めたいと本気で思う“同志”たちとの協業のもと、多くのお客様とつながり楽しんでいただくイベントです。2020年には5社だった参画ワイナリーも、22年には12社にまで増え、エリア全体を盛り上げています。

  • 勝フェス2022の様子。参画ワイナリーと協業しトークイベントを行うなど各種コンテンツの配信に加え、各社のワインを特別セレクトしたワインの通信販売などを実施。

「地域との共生」共に成長していく新たな産地 上田

新たなワイン産地として盛り上がりを見せてきている土地が、長野県上田市です。上田市には、2019年秋にオープンし、世界最高のワイナリーを選ぶ『「ワールド ベスト ヴィンヤード』にて日本で唯一、3年連続で選出されているシャトー・メルシャン 椀子ワイナリーがあります。

上田市とは、ワイナリーのオープンを契機に、メルシャンを含むキリングループで包括連携協定を結び、ともにワイン産業振興を軸にした街づくりを推進しています。上田市としては、ワイン産業が地域の新たな基幹産業として発展するように図り、「ワインの街上田」によるブランド化やワインによるシビックプライド(市民の誇り)の醸成を目指していく。またキリングループとしては、日本のワイン産業の発展に貢献するとともに、キリングループの事業活動を通じて、地域の各産業や上田市、周辺地域のプレーヤーとの連携を高めCSV経営を促進していく、というものです。

「ワインの街上田」としてワインが文化として定着するためには、市民の方々の日常生活の中で、ワインがより身近なものになることが必要です。椀子ワイナリーでは、ブドウ畑を眺めながら地元の食材とワインを味わえるイベント「椀子マルシェ」の開催など、市民の方々に上田のワイン、ワイナリーという場を楽しんでもらう機会をつくっています。また2022年には10月~12月にかけてワインに関するイベントと広報活動を上田市行政と共に実施。地域の料飲店や生産者と一緒になって市民の方々の飲用機会を増やす活動を展開しました。その中の一つ、「上田のワインが当たるオープンキャンペーン」では多くの市民の方から応募を頂き、市民の皆さんのワインへの関心の高さと、今後への期待や想いを感じる事ができました。「ワインの街 上田」への一歩が、今まさに動き出しています。

  • 上田市との連携協定に基づく活動の一環として、2022年に実施をしたイベント。駅前で上田市産のワインを飲み比べできるイベントや、飲食店にレストランに、シャトー・メルシャンを含む千曲川ワインバレー東地区で造られたお好みのワインボトルを持ち込み、食事とのマリアージュを堪能する企画など、他の生産者や地域の料飲店とともに、上田市民がワインに親しむ機会を提供。

また、ワイン産業振興においては人材の発掘・育成を通じた活動を行っています。ワイン産業は、ブドウ栽培から製造、小売り、飲食まで関連産業が多く裾野が広いのが特徴です。そこで「UEDA WINE BUSINESS LAB」という人材発掘・育成スクールを開設。ワインや地域ビジネスに関する座学、地域ワイナリーや食文化を学ぶフィールドワークを経て、最終的には地域活性のアイディアをビジネスや街づくりへとつなげることを目指しました。その参加者によって考案された企画の1つは実際に2022年秋のイベントでテスト展開も行われ、更なる上田市でのワイン産業の発展やワイン関係人口の増加に期待が膨らみます。

上田市では、特に2018年以降ワインに関わる事業者数は右肩上がりで推移。移住者も増加しており、ワイン産業発展の兆しが見えつつあります。そして、それに呼応するかのように、椀子ワイナリーでは2019年9月の設立以降、コロナ禍にもかかわらず来場者数・売上ともに順調に伸長しています。22年は、前年と比較して売り上げは113%、来場者数は108%の実績を記録し、より多くの方に椀子ワイナリーの魅力を楽しんでいただいています。

  • いずれも1-7月での比較

「ワイン文化とワイン産業は、産地全体で発展させるもの」――メルシャンの哲学は、この上田の地でもまさしくあらわれているといえるでしょう。

  • 上田市におけるワイン事業者の推移
    出典:上田市収集データより

社外の方々の声

キリンとの連携に関わる上田市の担当者は、実際の地域の変化を現場から、こう話します。

「賑わいのハブとなる椀子ワイナリーがオープンしたことで、『このワインは自分たちの街のものだ』という意識や地元ファンが加速度的に増えている実感があります。特に連携協定を結び良かったと感じるのが、人材面の交流。熱意を持ったキリングループのみなさんのノウハウや情報は、地方にいる我々の刺激となり、民間の若手人材をしっかりと育成・発掘したいというプロジェクト理念は、“市民が中心の街づくり”という我々行政の理念とも完全に一致します。
気候や歴史的にも上田市におけるワイン産業は多くの可能性を秘めています。さらにワールド ベスト ヴィンヤードの3年連続の選出などで、日本だけでなく世界的にも注目が集まっています。ワイン産業が他産業を牽引する存在となり、ワインにより市民が誇りを持てるような『日本一行ってみたい街』を目指しています」。(上田市担当者)

キリングループと上田市が取り組む「ワインの街上田」構想の一端に触れた「UEDA WINE BUSINESS LAB」参加者は、プロジェクトでの学びや成果を、それぞれこう話します。

「好きなワインを通じて、地域に貢献ができる仕事をしてみたいとかねてより考えていました。プロジェクトでは、参加メンバーや携わる事業者、行政の人々に出合えたことが何よりの収穫。さまざまな繋がりが出来たことで、発表したアイディアの実現性もより高くなったと思います」。(参加者)

「千曲川ワインバレーから日本酒の生産者まで、ワインを多角的に捉えられる体験から得た知識は、将来的に役に立つと感じています。自社のフィールドだけでなく、ワインを取り巻くモノ・コトを統括して、地域に還元するプロジェクトにしていることに、キリングループの本気の企業姿勢と懐の深さを感じました」。(参加者)

「未来との共生」 次のワインづくりのために

日本ワインが未来にわたり持続的に発展できるように、ワインの造り手を増やし、支援する活動も行っています。

長野県にあるもう一つのワイナリー、シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー(塩尻市)では、塩尻市と志学館高校の三社で、産官学連携での人材育成を行っています。志学館高校は、日本でも珍しいワイン醸造を行える総合学科を持つ学校。ここでは、シャトー・メルシャンのスタッフがブドウ栽培、ワイン醸造の講師や実習を担当しています。カリキュラムを履修した生徒さんの中からは、シャトー・メルシャン以外のワイナリーも含め、現在の日本ワイン業界の中で活躍している人材が輩出されています。

そして2022年、メルシャンは、日本ワインの持続的な発展のための新たな取り組みとして、スタートアップワイナリーへのコンサルティング事業を本格的に開始しました。
日本ワイン市場の構成比は2015年から2021年で約1.5倍の5.4%に伸長し、国内のワイナリー数は300社以上に増加している一方で、日本のワイナリーの大多数が低収益かつ小規模となっているほか、国内ではブドウ栽培からワイン造りまで体系的に学べる場所が限られていることもあり、スタートアップワイナリーの多くは、栽培および醸造技術や品質の面で課題を抱えています。
こうした課題を解決するべく、シャトー・メルシャンの経験豊富な人財や、145年にわたるワイン造りの経験という資産を活用し、栽培や醸造の技術的なサポートからマーケティングまで幅広い支援を行うことで、新たな産地でのワイン産業プレイヤー・グロワーの成長や活性化を促し、日本と言う産地の長期的・持続的な発展に貢献していきます。

  • 22年9月の段階では、主に東北地方のワイナリーを対象に展開。

「自然との共生」 持続可能なワインづくりのために

産地が将来にわたり発展するには、地域と未来に加えて、自然と共に歩むことも重要です。
シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤードは、2023年に「生物多様性のための30by30アライアンス」で自然共生サイトの認定相当として選定されました。30by30は2022年12月に開催された生物多様性枠組条約締約国会議(COP15)において、2030年までに地球の陸域及び海域のそれぞれ30%を自然豊かな地域として保全するものとするという、国際的な合意目標。日本では、この30by30に世界に先駆けて取組むことを掲げ、環境省主導のもと自然共生サイトの実証事業が2022年度からはじまっており、認定制度の実現性を確認するために椀子ヴィンヤードもこの事業に参加し、協力しています。
椀子ヴィンヤードに加えて、山梨県の天狗沢ヴィンヤードにおいても、国立の研究所である農研機構との共同研究によって、草生栽培でブドウ栽培を行う事が良質で広大な草原を創出・維持することに繋がることが、科学的に明らかにされています。
ここでのブドウづくりそのものが、豊かな自然環境保全に貢献し、後世に残すことができる地域の貴重な無形資産であるといえるでしょう。これからも、日本ワインの発展を担う銘醸地となるよう、自然とともに、持続可能なワイン造りを続けていきます。

  • 山梨県甲州市にある天狗沢ヴィンヤードにおける生態系回復検証調査(定点観測)の結果。垣根をつくるようにブドウの木を育てる垣根栽培は、その形状から地面にまで日光が降り注ぐため、背丈の低い植物が生育しやすい。さらに、年に数度行う下草刈りによって、草原性の在来種や希少種に陽が当たるようになることから、貴重な草原環境が形成されている。

「ワインのおいしい未来をつくる。」メルシャンのこれから

「ワイン文化とワイン産業は産地全体で発展させなければならない」 「1社で良いワインを造っても地域全体でワイン産地として認められなければ、将来日本ワインの発展はない」――この哲学は、メルシャンに脈々と受け継がれています。

地域と共に発展する日本ワインのあるべき未来像について、メルシャン株式会社 企画部 CSV担当の成瀬一義は、こう話します。

「ワインは人と人をつなぐ飲み物。数あるお酒の中でもシェアして飲まれる機会が多い飲み物と言われています。我々がメルシャン全体で目指すのは、<ワインのおいしい未来をつくる。>というスローガンのもと、日本でワインが日常により浸透し、当たり前のように飲まれる国になることです。ワインのある豊かな時間を通じて、人と人とのつながりを楽しんで頂けるようになることを願い、そこへ貢献できればと考えます。その中での日本ワインの役割とは、産地がより身近にあるというところだと考えます。造り手の話が直接聞けて、飲めて、現地で感動体験を味わう事ができる。これが海外ワイナリーだとなかなか簡単には実現できません。地名を知っている、週末訪れてみよう、今度は大切な友人も誘ってみよう、こんなことを多くの方が実現できることも日本ワインならではの価値では無いでしょうか。
そんな日本ワインの魅力をより多くの方に体験して頂きたいと願い、シャトー・メルシャンのクオリティシリーズ(藍茜、萌黄、ももいろ)はより日本らしさを感じられるパッケージへリニューアルを行い、4月11日(火)より、全国で発売します。
丁寧に愛情を注ぎ育てられた日本産のブドウから造られたワインをブレンドすることで「日本」というテロワールを表現するこのワインを是非お楽しみ頂ければと思います。

そして重要なのが、地域との共生です。我々はブドウが無ければワインをつくることができません。だからこそ地域社会と共に発展していくことが大切だと思っています。その土地でワイン文化が育まれワイン産地としての評価が上がれば、ワイン関係人口が増えることで地域が活性化し、訪問者も増え、日本ワインひいてはシャトー・メルシャンファンが増える事に繋がっていきます。それがまさにCSV経営の考えです。今後も地域と共に日本ワイン産業を発展させ、メルシャンが“日本を世界の銘醸地に”をかなえていきます。」

プロフィール

成瀬 一義

1992年キリン・シーグラム株式会社入社。同社及びキリンビール社にて、マーケティング部、広域流通営業部、営業本部などを経て、2020年春より現職。

関連情報

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

価値創造モデル

私たちキリングループは、新しい価値の創造を通じて社会課題を解決し、
「よろこびがつなぐ世界」を目指しています。

価値創造モデルは、キリングループの社会と価値を共創し持続的に成長するための仕組みであり、
持続的に循環することで事業成長と社会への価値提供が増幅していく構造を示しています。
この循環をより発展させ続けることで、お客様の幸せに貢献したいと考えています。