グループの収益性は、2015年度との比較においては大きく改善されたものの、まだまだ改革は道半ばであり、引き続き攻めの姿勢で構造改革を加速していくことが必要不可欠で
あると認識しています。
キリンビバレッジについては、利益ある成長の実現に向けて、ブランド強化と収益構造改革を、戦略の両輪としてさらに推進します。2016年度は、計画を上回る営業利益率4.9%を達成しましたが、より強固な収益基盤の構築を目指します。強いブランド体系の構築に向けて、「午後の紅茶」「生茶」に続き、コーヒーカテゴリーでは「ファイア」に集中し、ロングセラーブランドを育成します。しかし、グローバル水準の営業利益率二桁を目指すには、自社の取り組みだけでは限界があります。物流・製造分野などにおけるコスト構造改革に向け、同業他社とのアライアンスを引き続き検討していきます。
グループの収益力向上に向けては、キリンビールの収益基盤強化が最優先課題です。2016年度は、発泡酒・新ジャンルカテゴリーで大きく販売数量を落としました。特に、新ジャンルNo.1ブランドである「キリン のどごし〈生〉」の再成長は喫緊の課題であり、早急に流れを変えなければなりません。もう一つの課題は、市場構造そのものを変えていくことです。縮小が続くビール市場を活性化するため、「47都道府県の一番搾り」など、ビールの魅力を高めるキリンならではの取り組みを継続します。同時に、クラフトビールの展開を加速します。2018年の酒税法改正により「ビール」の定義が拡大される予定であり、多様な付加価値のある商品提案が可能となるため、キリンビールにとっては非常に大きなチャンスです。新たな料飲市場向けサービス「タップ・マルシェ」などによりクラフトビールを体験できる場を増やし、市場の拡大を図ります。さらに、過当競争からの脱却に向け、販促費抑制に率先して取り組みます。
ライオンでは、「コロナ」など輸入ビールのライセンス販売契約終了による減収影響をどう克服するかが課題となっています。しかし、自社ブランドの育成に集中できる環境となることは、中長期的に見ればむしろプラスになると考えます。また、柱であるビール事業に資源を集中するため、収益性の低い豪州ワイン事業の譲渡も実施しました。主力商品「フォーエックス・ゴールド」などのブランド価値を一層高めるとともに、人気が高まっているクラフトビールなど、自社の強みの領域を活かした取り組みを加速させていきます。
まず、市場成長力の高い東南アジアでのビール事業基盤強化、特にミャンマー・ブルワリーの持続的成長の実現に最優先で取り組みます。ミャンマー北部の製造・出荷拠点獲得のため、マンダレー・ブルワリーへの出資を決定しました。これにより市場成長を確実に取り込み、圧倒的なリーディングポジションをさらに盤石なものとします。また、アジア・オセアニア全域においてグループシナジーを発揮し、キリンブランドやクラフトビールブランドの拡大を進めていきます。さらに、選択肢の一つとして、現地企業への出資や業務提携も有力な戦略オプションとして検討していきます。
研究開発等の基盤の優位性を活かしてキリンならではの価値創造を行っていくことは、既存事業の競争力強化に加えて、これまでの事業の枠を超えた領域における新たなビジネス創造にもつながると私は信じます。
例えば、キリングループが保有するプラズマ乳酸菌や植物バイオ技術。プラズマ乳酸菌は、既に飲料やヨーグルト、サプリメントとして商品化していますが、免疫の根本を強くするというプラズマ乳酸菌ならではの特徴を活かした新たな価値提案ができないか検討しています。後者の植物バイオに関わる技術は、植物で医薬品に関連した原料などを生産することに応用可能であり、大学や他企業と連携しながら開発を進めています。NEDO※の助成・委託事業では活性型ビタミンD3をキリン独自の植物大量増殖技術を活用して、高効率・低コストで生産することに取り組んでいます。
既存事業の成長性を高めながら、活動領域拡大の可能性も積極的に探索し、有望な事業機会に対しては果敢に挑戦していきます。また、そのために必要な基礎研究やオープンイノベーションへの投資も、柔軟に行っていきます。