当社は長い歴史の中で、技術力を活かして様々な付加価値を持つ商品をお客様に提案してきました。そして、ビール事業で培った発酵・バイオ技術および量産技術を応用して医薬事業に進出し、その後協和醗酵工業と経営統合して誕生した協和発酵キリンがグループに加わったことにより、グループ全体として幅広い技術力を有しています。
キリン(株)R&D本部の6つの研究所のクロスオーバーによる効的・効率的な研究開発や、協和発酵キリン研究開発本部の特徴であるカテゴリー別組織と機能別組織の自立と連携に基づく研究開発によって、イノベーションの創出を推進しています。さらに、両社の持つ技術や知見を組み合わせた、キリングループならではの価値創造にも挑戦しています。
キリングループの強みである技術力をさらに強化し、社会とお客様に新しい価値を提供していきます。
キリン(株)R&D本部は、食と健康を中心とした領域での新たな価値創造を目指し、研究開発を行っています。約300人の研究員が、研究所の壁を超えて技術やアイデアを融合させ、キリングループ内外の異なる知見を積極的に取り入れることで、様々なイノベーションを創出しています。
多様なビール類の試験醸造に対応できるパイロットプラントを持つ酒類技術研究所や、自社で包装容器の開発・評価を行うパッケージング技術研究所などの強みを活かし、研究開発成果を速やかに商品・サービスに展開しています。これまで培った10の主要技術を強みとして、様々な技術と組み合わせながら、将来を見据えた新たな価値の創出に活かしています。
協和発酵キリンは、バイオ医薬品で培った独自の研究開発力および製造技術力とオープンイノベーションを最大限に活用し、抗体医薬、低分子医薬、核酸医薬、再生医療の4つのモダリティを核とした新薬創出活動を展開しています。アンメット医療ニーズに応える画期的な医薬品を継続的に創製し、いち早く上市することを目指して「、腎」「がん」「免疫・アレルギー」「中枢神経」のカテゴリーごとに創薬から開発、育薬までを統括して取り組む体制で研究開発を進めています。
協和発酵キリンの強みとなる技術の一つに、抗体医薬品製造技術があります。長年のバイオ医薬品研究の成果として、抗体医薬品の性能を飛躍的に高める「ポテリジェント技術」「コンプリジェント技術」や、ヒト型の抗体を作成することができる「ヒト抗体産生技術」などを確立してきました。抗体医薬品の創出から改良まで一貫した研究プラットフォームと多彩な技術は、抗体医薬品開発に大きく貢献しています。
酒類・飲料事業と医薬・バイオケミカル事業が一層密に連携し、両事業の持つ技術を組み合わせて新たな価値を創造していく取り組みを加速させるため、キリン(株)R&D本部と協和発酵キリングループの研究員間の交流を活発化させる取り組みを開始しました。両社の協働テーマを着実に進捗させ、具体的な研究成果を実現させていきます。
また、有望な技術の開発・応用・実用化に向けたオープンイノベーションをより一層積極的に行っていきます。
主要技術の一つである選択的成分除去技術は、おいしさを維持しながら不要な成分だけを選択除去する技術です。
発泡酒中に含まれるプリン体を選択的に除去する世界初の技術である「プリン体カット製法」を活用した「キリン 淡麗プラチナダブル」はお客様の高い支持を得ており、2016年度は前期比+6.6%の650万ケースを販売しました。
また、カフェインを選択的に吸着する天然吸着剤を活用することにより、緑茶や紅茶の味や香りなどのおいしさを維持しながら、茶中のカフェインを除去する「カフェインクリア製法」は、2016年の日本清涼飲料研究会において、「全国清涼飲料工業会賞」を受賞しました。この技術は「カフェインゼロ生茶」(2017年5月に「生茶デカフェ」へリニューアル予定)や「午後の紅茶 こだわり素材」シリーズへと展開され、妊産婦の方や小さなお子様などにも安心して飲んでいただける商品づくりに貢献しています。
協和発酵キリンのKRN23は、グローバル競争力の向上を牽引するグロール戦略品として開発を進めています。KRN23の開発はリン代謝※1に着眼した研究から始まりました。その後、腫瘍性骨軟化症やX染色体遺伝性低リン血症※2などの疾患に関与する因子としてFGF23を発見。独自の抗体技術により、FGF23の作用を抑える抗体であるKRN23の創製に成功しました。FGF23の発見を科学的な意義だけに留めず、KRN23という治療薬候補の創出に結び付けることができたのは、病気に苦しむ患者さんのために必要とされる新薬を開発するという、協和発酵キリンの思いを具現化したものです。協和発酵キリンは、海外での持続的な成長を実現するために、北米、欧州、日本、韓国などでKRN23のX染色体遺伝性低リン血症を対象とした国際共同第III相臨床試験を進めています。