食領域

食領域が対象とする社会課題と事業

  • 人と人のつながりの希薄化への対応/食領域の事業。酒類・清涼飲料・乳製品の基礎研究、技術開発、商品開発、調達、製造、需給・物流、販売、販売先の支援

人と人のつながりの希薄化への対応

新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに加速した新しい生活様式の浸透によって、人と人との直接的な関わりが減少しており、人や社会とのつながりの場の創出が求められています。

食領域の事業

酒類・清涼飲料・乳製品の
・基礎研究
・技術開発
・商品開発
・調達
・製造
・需給・物流
・販売
・販売先の支援

  • 人と人とがつなる機会をつくる商品・サービス

  • 人と人とがつながる機会をつくる商品・サービス

  • 新ビールブランド「キリンビール 晴れ風」は、売上の一部を花見や花火大会などの日本の風物詩を守る活動に寄付。人々がつながる機会を守ります。

  • 語り合いたくなる、こだわりのクラフトビールを各国で展開。原料生産地とお客様を結ぶきっかけにもなっています。

  • ノンアルコール商品を拡大し、適正飲酒を促進。お酒を飲める方・飲めない方・飲まない方も、気分やシーン、体調に合わせ、一緒に豊かなひとときを楽しめる選択肢をつくります。

  • 「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」では、災害からの復興に取り組む方々の思いと、全国のお客様の応援の気持ちをつないでいます。

  • 新ビールブランド「キリンビール 晴れ風」は、売上の一部を花見や花火大会などの日本の風物詩を守る活動に寄付。人々がつながる機会を守ります。

  • 語り合いたくなる、こだわりのクラフトビールを各国で展開。原料生産地とお客様を結ぶきっかけにもなっています。

  • ノンアルコール商品を拡大し、適正飲酒を促進。お酒を飲める方・飲めない方・飲まない方も、気分やシーン、体調に合わせ、一緒に豊かなひとときを楽しめる選択肢をつくります。

  • 「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」では、災害からの復興に取り組む方々の思いと、全国のお客様の応援の気持ちをつないでいます。

食領域の事業事例:
サステナブルな大麦を使ったクラフトビールで
生産地のコミュニティ活性化へ

  • ライオン
    Sustainability Leader

    Jahdon Quinlan

  • ライオン
    Sustainability Director

    Justin Merrell

従来の農法が引き起こす環境への悪影響

ライオン(Lion)はサステナビリティについて、これまでも100%再生可能エネルギーの調達やバイオガス発電、エネルギー効率化など、さまざまな施策を展開してきました。現在はさらに取り組みを拡大し、サプライチェーン上流のサステナビリティ推進にアプローチしています。

ビールの主な原料といえば、大麦とホップです。大麦の栽培は従来、単一栽培(モノカルチャー)を基本としてきました。しかし、広大な土地を使って1つの作物を栽培するこのやり方は、効率は良いものの、合成窒素肥料や農薬の使用量が多く、土壌の健康状態や生物多様性、水質に悪影響を及ぼします。また、気候変動や生物多様性喪失といった社会的・環境的課題の拡大に伴う従来システムの長期的なレジリエンスを鑑みると、生産者コミュニティの社会経済的なウェルビーイング低下にもつながるなど、多面的な課題を抱えていました。短期で大きな収量を優先する結果、農地にダメージを与え、自然資本を大切にできていない状態だったのです。

加えて、The Beverage Industry Environmental Roundtable(BIER)※1が2012年に発表した、炭素排出量と商品ライフサイクルに関する調査では、ビール(瓶または缶)1本当たりに占める麦芽のカーボンフットプリントは、欧州では39%、北米では33%を占めました。他にも、ライオングループ内の調査では、Scope 3のGHG排出量のうち大麦栽培がかなりの部分を占めるというデータもあります。脱炭素化や自然資本回復を考えたとき、大麦栽培におけるサステナビリティが優先的に取り組むべき課題であることは間違いありません。

  • 大麦やホップの生産者によるリジェネラティブ農業への取り組みに着目

リジェネラティブ農業で土壌の健康を守る

そこで私たちは、大麦やホップの栽培にリジェネラティブ(環境再生型)農業を取り入れている生産者を支援しています。リジェネラティブ農業とは、自然のサイクルを生かして土壌が本来もつ力を最大化するものです。収量重視で土壌から養分を搾り取るのではなく、土地やコミュニティの長期的な健康状態やサステナビリティを重視し、肥沃で回復力の高い土壌を育てます。

具体的な実践方法は生産者や地域によってさまざまですが、化学肥料や農薬の使用削減、土壌の養分管理プログラムの実践、被膜作物(カバークロップ)※2の栽培、不耕起栽培※3など、サステナブルな農法を組み合わせたものとされています。他にも再生可能エネルギーを活用したり、畑で家畜を飼ってふん尿を堆肥としたりするケースもあります。これにより、土壌内での炭素貯留、保水性の向上、環境汚染の抑制といったメリットが生まれます。

サステナブルな原料を使った地域密着型のビール

私たちは、このようにリジェネラティブ農業で造られたサステナブルな穀物をビール醸造に取り入れ始めています。当社では「責任ある調達方針」を掲げており、特に主力ブランドである「Stone & Wood」はオーストラリアのビールメーカーの中でもサステナビリティに先駆的に取り組んできた経緯もあり、サステナブル原料の使用に強いこだわりがあります。

2022年初頭から、オーストラリアのバイロンベイにあるノーザンリバーズ醸造所でサステナブルな穀物の試験醸造を開始しました。少しずつ規模を拡大していった集大成が、2024年に発表した「Northern Rivers Beer」という商品です。とても飲みやすいラガータイプのビールで、原料には認証を受けたサステナブルな麦芽を70%、同じく認証を受けたサステナブルなホップを100%使用しています。まずは小さなロットでの生産となりましたが、私たちにとって意義深い一歩であることに間違いありません。
第1弾はローカルに展開しようということで、ニューサウスウェールズコーストのトゥイード・ヘッズとヤンバの間で流通させており、地域住民の皆さんから高い評価を受けています。

リジェネラティブ農業への関わりは、醸造だけにとどまりません。当社がクラフトビール業界全体に対してもっている影響力を生かし、2024年にはオーストラリアを代表するリジェネラティブ農業NPOと共に4件のプロジェクトに共同出資したり、非営利財団「Ingrained Foundation」を通じて25,000ドルを出資したりと、「GOOD GRAIN(良い穀物)」産業育成施策を打ち出す予定です。生産者にとって最適な調達ルートの開拓、リジェネラティブ農業やその効果に対する社会の意識向上など、穀物業界ひいては農業界全体にとっての良い変化を生み出していきたいと考えています。

  • 「Northern Rivers Beer」。地元への敬意を評し、缶のモチーフには地域でよく見かけるヤブツカツクリという鳥が描かれている

  • ニューサウスウェールズ州農業省とのプロジェクト。毎年の播種が必要な従来の穀物と異なり、3~5年間生産が持続する多年生穀物の開発に試行錯誤している

サステナブルな商品の売上拡大とともに業界にもプラスの影響を

「サステナブルな原料」について正しく理解するためには、生産者が取り組んでいる内容やその効果について学ぶことが不可欠です。私たちは、大麦やホップの生産者の元へ実際に足を運び、リジェネラティブ農業への取り組みについてのヒアリングを重ねています。私たちにできることは、その商品の背景や意義をストーリー化して発信すること。こうしたコミュニケーションが商品に付加価値を加え、生産地のコミュニティにとっての経済効果を生みます。生産者にとっては、自分たちの農作物に対する消費者の評価を知ることができてやりがいや自信につながるとともに、投資を拡大して自分たちの農業を変えよう、リジェネラティブ農業をもっと展開しようというモチベーションにもなります。

今後も当社はサステナブルな原料の調達や意義の発信により、消費者ニーズの喚起、環境負荷低減策の提示、地域ビジネスのサポートにつなげ、「Northern Rivers Beer」のような商品の需要拡大・成長に貢献していきます。同時に、一定の影響力をもつ立場として市場全体への広い視野をもち、ベストプラクティスを共有して先行事例を築くなど、クラフトビール業界に変革を起こすことを目指していきます。こうした取り組みが、資本家や社会全体にとっても前向きなメッセージとなり、自然資本の回復、より良い環境を実現する筋道になると信じています。

 

  1. 飲料業界のサステナビリティ推進を目的として、世界各国の主要な飲料関連企業で結成している業界団体。
  2. 肥料の流出や、土壌の侵食、雑草を防ぐために、クローバーなどの植物を植える方法。
  3. 田畑を耕さない農法。耕すことで失われる生態系や、土壌内の炭素および保水性を維持する。