豊かな自然を育むブドウ生産がネイチャー・ポジティブに導く

  • 環境

2024年05月31日

  • 豊かな自然を育むブドウ生産がネイチャー・ポジティブに導く

世界のGDP(国内総生産)は半分以上が「自然資本」に依存しているとされます。キリングループでも主な事業では水や農作物を原材料とし、例えばビール事業では酵母、バイオ医薬品事業では微生物の力を借りて製品を造るなど、自然資本を活用しています。CSVを経営の根幹に据えて成長を目指す上で、これらの自然資本を持続的に利用できるようにする必要があります。

2010年の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)をきっかけに、当社グループは自然資本をマテリアリティとして再定義し、課題解決を進めてきました。近年ではさらに、自然生態系の損失を食い止め、回復させることを意味する「ネイチャー・ポジティブ」への貢献を見据えています。

ネイチャー・ポジティブの達成に向け、国内では環境省が、生態系が豊かな自然環境を有する民有地を「自然共生サイト」として認定しています。当社グループ会社であるメルシャンの日本ワインのためのブドウ畑である「シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード」は2023年、この自然共生サイトに正式認定されました。2023年に認定された122カ所で唯一、事業として農業を営む場所です。

椀子ヴィンヤードが採用している草生栽培※1では、農業を営み人が関わり続けることで生態系が豊かになる「二次的自然」を育んでいます。日本やアジアにある自然のほとんどが二次的自然であり、このヴィンヤードは日本の自然の豊かさを国内外に知っていただく好事例です。

私たちは、二次的自然の重要さを発信しようと活動しています。自然資本の世界的なルールが決められようとする中で、それらを利用する農業や林業を通じて人が管理することで二次的自然が形成され、維持されることでネイチャー・ポジティブにつながると世界に認知してもらうことが大切だからです。

椀子ヴィンヤードが自然共生サイトに認定されたことで、OECMs※2として国際データベースにも登録され、生物多様性保全に貢献しているヴィンヤードとして世界に発信できました。2023年9月には、この活動を紹介する「シャトー・メルシャン 椀子SDGsツアー」を開始。参加費は1万円ですが毎回満員となる好評ぶりです。今後もこうした対外発信は一層増える見込みであり、ブランドの認知や価値向上につながると期待しています。また、他のヴィンヤードでも同様の取り組みが加速することで“日本ワイン”の認知度向上にも寄与すると考えています。

今後は、メルシャンが自社管理する他のヴィンヤードも自然共生サイトの認定を目指します。また、ヴィンヤードから排出されるGHGの量を正確に測定する調査を行い、生態系だけではなく気候変動にどのような影響を与えているかを科学的に検証していきます。さらにブドウの木の剪定枝をバイオ炭にして土壌にGHGを固定化するなど、環境再生型農業を通じた環境の課題解決につなげる予定です。

  1. 果樹園の下草を除草せずに栽培する手法。下草があることで土壌の侵食を防ぎ、畑に有機物を補給できる効果がある。
  2. 保護地域以外で生物多様性保全に資する地域。
  • 椀子ヴィンヤード

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

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