医領域

画期的な新薬を生み出し続ける体制・仕組みをつくる

  • 協和キリン
    取締役専務執行役員

    山下 武美

オーチャード買収で、ニーズに応える力を強化

新薬の製造販売を基本とする私たちの事業は、既存治療を上回る新薬の創出・提供により、医療の進化を通して社会に貢献しています。しかし新薬創出の難易度は上昇し続けており、研究開発費も増加の一途をたどっています。また、医療費高騰による財政圧迫が世界的に問題となり、医薬品の価格を押し下げる政策や規制が各国で進められています。医薬品の価格に対しては提供価値に対する適切な対価(Value-based pricing)という概念が近年広まり、社会的価値と経済的価値を両立させるCSV経営がまさに求められています。私たちは治療薬のない疾患や新たな薬を必要としている患者さんに着目し、真に価値のある医薬品を通じてLife-changingな価値※1の提供にフォーカスする「Vision 2030」を定めました。

自社で創製した「クリースビータ」や「ポテリジオ」は真にLife-changingな価値を提供する医薬品として世の中に受け入れられ、これを軸に私たちはグローバルに事業を拡大できました。将来の成長のドライバーとして期待するKHK4083/AMG 451(一般名:rocatinlimab)も開発が進展しています。このようにVision 2030達成に向けた基盤を構築し、着実に前進できています。一方、2030年以降の未来については、将来のニーズに応える力をさらに強化する必要があります。そこで、私たちのビジョンにフィットし、私たちのさらなる成長に寄与しうる企業としてオーチャード(Orchard)に着目しました。

同社を買収する意義は二つありました。一つはアンメット・メディカルニーズ(UMN)※2に応えるLife-changingな価値を有する製品と開発パイプラインを充実させることです。もう一つは、根本的な治療に挑戦できる、細胞遺伝子治療への足掛かりとなる造血幹細胞遺伝子治療(HSC-GT)とその研究開発プラットフォームを獲得することです。

  • 協和キリンは、イノベーションの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-Changingな価値の継続的な創出を実現します。

    2030年に向けたビジョン

  • Story for Vision 2030 Life-changingな価値を創出・提供するための戦略。疾患サイエンス、創薬テクノロジー、外部との連携を行う。自社で注力する疾患領域のアセット、戦略的パートナリングアセットを活用し、Life-changingな価値の創出を行う。

  • 協和キリンは、イノベーションの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-Changingな価値の継続的な創出を実現します。

    2030年に向けたビジョン

  • Story for Vision 2030 Life-changingな価値を創出・提供するための戦略。疾患サイエンス、創薬テクノロジー、外部との連携を行う。自社で注力する疾患領域のアセット、戦略的パートナリングアセットを活用し、Life-changingな価値の創出を行う。

近年脚光を浴びる細胞医薬の研究を加速

オーチャードは、HSC-GTの実用化における最先端企業であり、「Libmeldy」という製品を既に欧州で販売し、米国でも2024年に販売を開始する見込みです。これは異染性白質ジストロフィー(metachromatic leukodystrophy)という極めて重篤な疾患を対象とする初めての医薬品で、HSC-GT技術でしか成しえない治療を提供するものです。対象患者数は極めて少ないですが、高額な薬価で受け入れられています。さらに臨床開発ステージにはOTL-203、OTL-201という同様のLife-changingな価値を有する2つの開発品があり、細胞遺伝子治療という事業の軸ができています。この事業を私たちのグローバルビジネスに加えることにより、Life-changingな価値を提供するグローバル・スペシャリティファーマとしてのプレゼンスを一層高め、Vision 2030実現が近づくことができます。

オーチャードが得意とするHSC-GT技術は、多様な血液細胞の源である血液幹細胞を患者さんから取り出し、それに遺伝子操作を加えた後、患者さんの体内に戻すというプロセスからなります。いくつかの重要なステップそれぞれの技術が優れているだけでなく、実用化レベルにまで完成している点が強みです。現在の製品・開発品は単一の遺伝子異常による先天性疾患を対象としていますが、このプラットフォームには発展性があり、当社が長年培ってきたバイオ・抗体技術を組み合わせることで広く応用できると考えています。

また、従来の医薬品では実現できない治療を可能にするものとして近年脚光を浴びている細胞医薬の研究も加速できます。まずは重篤な遺伝性疾患に苦しむ患者さんに、これまでにない治療を提供することから始めることでVision 2030の達成を目指します。2030年以降においても引き続き、未解決の医療ニーズに対してソリューションを提供し続けるための研究開発も推進していきます。

革新的なモダリティを活用して医薬品を創製

この3年間で「クリースビータ」「ポテリジオ」の成功により、グローバル自販体制を確立しました。そして、rocatinlimabの製品化とその価値最大化を、大手製薬会社と提携して順調に進め、価値創造力に基づく成長を実現しています。私たちの目指すグローバル・スペシャリティファーマの姿とVision 2030達成に向けたプロセスが、中期経営計画を策定した2020年時点と比べ飛躍的に具体化しており、これを「Story for Vision 2030」として2024年2月にいたしましたので、その内容をご紹介します。

Life-changingな価値を生み出すことが私たちの競争力の源泉であり、未解決な医療ニーズに対するソリューションを生み出す研究開発力の強化を継続的に行います。知識集約型の産業であるため、私たちの強みを培う戦略的な領域として骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患に注力していくとともに、先進的な抗体技術や細胞遺伝子技術といった革新的なモダリティを活用することで高度な治療を実現する医薬品の創製を目指します。

当社の注力領域についてはグローバルに自社販売を行いますが、自社だけでカバーできない領域は戦略的なパートナリングを活用し、より多くの患者さんに価値を届けていきます。

私たちは患者さんに寄り添い、Life-changingな価値をサステナブルに創出・提供する事業をStory for Vision 2030に沿って実現させます。

  1. 病気と向き合う人々の満たされていない医療ニーズを見出し、その課題を解決するための新たな薬やサービスを創造し、提供することで、患者さんが「生活が劇的に良くなった」と感じ笑顔になること。
  2. Unmet Medical Needs。未充足の医療ニーズ。