「人」を中心としたビジネスで、コミュニティに貢献する

  • コミュニティ

2023年06月05日

  • 「人」を中心としたビジネスで、コミュニティに貢献する

  • 関連する持続的成長のための経営諸課題、・人権の尊重、・原料生産地と事業展開地域におけるコミュニティの持続的な発展、・ウェルビーイングを育むつながりと信頼の創出、・食に関わる経済の活性化 SDGsゴール 2 4 8 11 12 15 17

  • 関連する持続的成長のための経営諸課題、・人権の尊重、・原料生産地と事業展開地域におけるコミュニティの持続的な発展、・ウェルビーイングを育むつながりと信頼の創出、・食に関わる経済の活性化 SDGsゴール 2 4 8 11 12 15 17

New Belgium Brewingでは、商品やサービスを通して、お客様やバリューチェーンに関わる全ての人々が喜びでつながる社会の共創と発展に貢献することを目指しています。その実現に向けて、「Human Powered Business」という事業モデルを確立することで、「コミュニティ」へ貢献しています。

New Belgium Brewingとは

New Belgium Brewing(以下、NBB)は1991年、ジェフ・ルベシュとキム・ジョーダン夫妻によって米コロラド州フォートコリンズで創業。自家醸造家のジェフがベルギースタイルのビールを考案し、ソーシャルワーカーのバックグラウンドをもつキムと一緒にクラフトブルワリーとして立ち上げました。翌1992年、「Fat Tire Amber Ale」をはじめとするビールをコロラド州で発売すると、その人気はたちまち全米に広がり、2016年にノースカロライナ州アッシュビル、2018年にコロラド州デンバー、2021年にはサンフランシスコに、次々と醸造所を開設しました。そして、2022年には品質と人を大切にするクラフトブルワリーとして志を同じくするベルズ・ブルワリーを傘下に収めました。

現在の商品のラインアップには「Fat Tire Ale」(米国初カーボンニュートラル認定ビール)、「Voodoo Ranger IPA」(全米1位のIPAブランドシリーズ)、「Two Hearted IPA」(American Homebrewers Associationが4年連続で選んだベストビール)、「Oberon Ale」(Oberon Dayというミシガン州の祝日を制定するきっかけとなったビール)などがあります。またNBBは後述するB Corporation(以下B Corp)の認定を受けています。
私たちは、科学的根拠に基づく意欲的なGHG削減目標を掲げて気候変動対策をリードし、社会や環境にポジティブなインパクトを与えるためにこれまで3,100万ドル以上の寄付を行い、TRUE Zero Waste認証※1を継続し、Human Rights Campaign FoundationのCorporate Equality Index※2で満点を達成した初めてのクラフトブルワリーとなりました。現在、1,300人以上の従業員を抱えるNBBは人を中心に据えた革新的なアプローチにより、米国クラフトビール市場でトップクラスの販売数量と成長率を誇っています。

  1. 米国の第三者認証機関であるGreen Business Certification Inc.が実施する、資源の使用と使用効率性に配慮することで廃棄物ゼロを目指すための認証制度
  2. 米国の人権団体Human Rights Campaign FoundationがLGBTQに対する適正な取り組みを評価し公表する企業平等指数

Human Powered Businessとは

NBBは、共同創業者であり、元ソーシャルワーカーであるキムの「People first」という思いを原点に創業されました。創業以来、当社は「事業とは人の努力の結晶である」というシンプルかつ根本的な事実に基づき、「Human Powered Business」という事業モデルを確立・発展させてきました。事業を支え、成長させてくれるのは人の存在。その認識に立ち、当社は従業員やコミュニティのウェルビーイングを全ての活動の中心に据えています。これにより、「権限を与えること」と「協働」を軸とした自己実現の風土が醸成され、中長期的な業績向上を実現しています。強い組織は従業員一人一人の行動によってつくられるのです。

Human Powered Businessを進めた結果、当社は現在、米国のクラフトビール業界でトップクラスの存在感を確立しています。従業員の離職率も非常に低く、常に高いエンゲージメントを維持しており、新型コロナウイルス感染拡大以降も、誰一人として従業員を解雇することなく逆風を乗り越えてきました。当社の従業員が日々商品のクオリティと事業の成長に注力している理由の一つには、当社が多方面で従業員の生活のクオリティと成長に投資してきたことが挙げられます。

「Human Powered Business」の4つの原則

「Human Powered Business」は4つの基本原則で構成され、事業の長期的な成功を導いています。

1. 人を大切にする
「会社の中心は人」――これはNBBが創業から一貫して保ち続けている姿勢です。当社は、肉体的な健康だけでなく、経済、社会、環境全てにおいて満たされた心豊かな暮らし(ウェルビーイング)の実現を目指し、従業員とコミュニティをサポートしています。事業拡大に伴い、経営の透明性や賃金の公平性の向上、健康支援室の設置を含む健康支援の拡充などの施策を通じ、従業員への投資を拡大してきました。こうした施策が従業員の生産性を向上させ、企業の成長をもたらしています。

2. 世界に誇れるビールを造る
当社は創業時から「おいしいビールを、責任をもって提供する」ことに心血を注いできました。従業員は長年にわたり腕を磨いてきたエキスパートであり、技術に誇りをもっています。受賞実績も豊富で、1993年のAbbey Aleの金賞受賞から2021年のTrippelの金賞受賞に至るまで、米国で最も権威あるビアフェス「グレート・アメリカン・ビアフェスティバル」で34個のメダルを獲得しています。

3. 社会と環境の変化を促す
事業を通じて社会や環境の問題に取り組むことで、ビジネスを「force for good」、つまりより世の中を良くする力として利用できると考えています。当社は2012年に「B Corp」に認定されて以来、環境や社会に配慮した事業を継続し、その説明責任を果たしてきました。気候変動対策、慈善事業、アドボカシー(市民社会や政府への働き掛け)、ブランドを通じた行動変容キャンペーンなど、さまざまな手段を活用して3,000万ドル以上の寄付を行い、社会における重要な変革をサポートしています。

4. 思いきり楽しむ
当社は従業員の仲間意識や一体感を高め、イノベーションを育むために、仕事の「楽しさ」を重視しています。画期的なアイデアは多様な経験から生み出されるため、失敗を恐れず挑戦し、自分らしく仕事ができる環境づくりに注力しています。その一環として、入社1年が経過した従業員に特製の自転車を贈る制度や、入社10年目、20年目の従業員への長期有給休暇を付与する制度を導入しています。

私たちが従業員とともに考えた企業理念は下記の通りです。

  • 図:私たちの価値観 たとえ困難でも「正しいこと」をする

  • 図:私たちの価値観 たとえ困難でも「正しいこと」をする

B Corp認証

「B Corp」は米国の非営利団体B Labが運営している認証制度で、全ての人が公正に暮らすことができる持続可能な社会の実現に向けて取り組みを行っている企業を認証するものです。B Corpは不平等の解消、貧困の削減に努め、環境の改善、コミュニティの強化、質の高い雇用の創出を目指しています。同認証では従業員、顧客、環境、コミュニティを含むステークホルダーへの公益性に加え、ガバナンスも評価対象になります。

創業以来、社会問題・環境問題の解決に事業を通じて取り組んできたNBBは、2012年にB Corpとして認定されました。同認証の取得により、自社だけでなく志を同じくする認定取得企業と比較しながら進捗を評価し、独自の企業文化と価値観を守り続けることができると考えています。当社は会社設立以来社会と環境に対する責任を果たすため、先進的な気候変動対策計画、拡張性のある慈善活動、積極的な政策提言、そしてブランドを通じた行動変容キャンペーンなどあらゆる手段を活用し社会の変革を推進しています。

New Belgium Brewingの主要なコミュニティ

コミュニティへの参画やコミュニティの組織との連携は、NBBの理念の一部です。当社は全米の非営利団体と協力することで、事業を展開するコミュニティにポジティブな影響を与え、私たちを支えてくれる地域の皆様にご恩を返し、全ての人々にとって明るい未来を目指しています。

また、人を中心に据えた企業として、場所を問わずお客様やコミュニティに誠実に向き合っています。なかでも当社の醸造所があり、従業員が多く住む地域の支援に注力しており、ヘルスケアサービスの拡充や、給与水準の向上、インクルーシブな文化の醸成を通して従業員を日々サポートしています。さらに、私たちにとってのホームタウンである地域の水系やコミュニティの保全を目的とした寄付やボランティア活動を実施しており、昨年だけで支援先のコミュニティや慈善団体に合計566,729ドルを寄付しました。具体的な内訳としては、ノースカロライナ州アッシュビルに116,631ドル、コロラド州フォートコリンズに181,225ドル、ミシガン州(コムストック、カラマズー、エスカナーバ)に268,873ドルとなっています。

私たちは、クラフトビール業界における人種・民族のDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)も推進しています。米国のBIPOC(黒人、先住民、有色人種)は総人口の41%を占めるにもかかわらず、クラフトビール飲用者の中に占める割合はたった15%に過ぎません。さらに、BIPOCは社会保障や雇用の機会に恵まれず、政府や企業の要職に就けないなど、社会の主流から取り残されています。米国経済のけん引役である私たち企業は、このように社会的に不利な立場に置かれた人々を支援し、不平等を是正する責任があると考えています。

この他、クラフトビール業界における人種・民族のDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進するため、さまざまな施策を実施しています。2018年にはアトランタ、ニューヨーク、マイアミ、ロサンゼルスなどの総人口比と比べてBIPOCのクラフトビール飲用者が少ない地域で新たな関係を構築するため、専門チームによる多文化マーケティングプログラムを開始しました。同チームは現地の人々にクラフトビールを紹介する一方、地域経済活性化のための寄付を行い、クラフトビール関連産業での雇用を提供する活動を実施しました。また、2021年と2022年には料飲市場向け販売プログラム「Brewed For All」を通じ、「Human Powered Business」の原則を市場にも浸透させるとともに、LGBTQ+の人権向上を支援しました。さらに、2023年にはLGBT支援団体「HospitableMe」と連携して「Poured for All」というデジタル研修プログラムをバーやレストランに提供し、全ての人々にとって居心地の良い空間の提供を目指しています。

また、従業員一人一人の活躍を支援するため、大きな災害や事故などで被害に遭った従業員に見舞金を支給する「New Belgium Coworker Assistance Fund」の他、ボランティア活動に参加する従業員に有給休暇・参加費用を提供する「Beer Scouts Volunteer Program」などの諸制度を提供しています。さらに当社には、料飲事業の従業員がチップをプールし、地域の団体や活動に寄付する従業員寄付委員会などの制度もあります。これらの活動は従業員の自主性を育て、社内で資産や、機会、責任を共有する企業文化の一環です。

気候変動対策、DE&I、コミュニティ貢献における成果

当社はコミュニティへの貢献で大きな成果を上げています。例えば、気候変動対策においては早くから、資源を一方的に消費する「採取型経済」から、労働者、コミュニティ、環境の公平性を重視する「再生型経済」への移行を促進してきました。また、サプライチェーンにおける気候変動への社会的・経済的・生態系システム的な耐性を強化しています。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)においては、私たちはクラフトビール産業が米国全体と等しく多様な人々によって構成されるように早くから取り組み、誰もが経済システムに参画でき、能力をいかんなく発揮できるような社会づくりに貢献しています。さらに、公共の大地や川や海といった自然空間を、年齢・人種・所得水準の違いにかかわらず、全ての人や文化が利用できるよう努めています。

最後に、当社はサステナブルかつインクルーシブで、誰もが希望をもって生きられる心豊かな地域社会の実現に注力しています。この一環として、災害時における救援、復興、対応力(レジリエンス)の増強に努めるとともに、責任ある飲酒を推進しています。

  • Grid Alternativesと連携した従業員ボランティアプロジェクトの場面

    Grid Alternativesと連携した従業員ボランティアプロジェクトの場面
    Grid Alternativesは太陽光発電事業における米国最大のNPOであり、低所得者向け太陽光発電普及にむけた政策提言をリードしている団体です。

現代社会の最重要課題への解決策としてのHuman Powered Business

今、米国は経済格差、気候変動、人種差別などの歴史的な課題に直面しており、企業はこれらに対して真の解決策を提供する必要があります。残念ながら、企業は表向きには変革をうたっているものの、従業員や地域社会、そして環境に対する配慮を行動の中心に据えることができずにおり、ここ40年ほどで非人道化が進んでしまっているのが現状です。

「Human Powered Business」は、この望ましくない傾向を反転させるものです。 Human Powered Businessが広く受け入れられれば、世界が直面する最大の課題の解決を大幅に早めると同時に、より強力で、収益性が高く、レジリエンスの高いビジネスを長期的に構築できると信じています。企業が従業員に投資すれば、その分従業員が企業とより良い社会の実現に向けて貢献し、リターンとして返ってくる。「従業員が会社のためにある」のではなく、「会社が従業員のためにある」のです。

こうした取り組みは一見するとコストがかかるように思われるかもしれませんが、気候変動や不平等、人種差別といった問題が個々の企業や社会に与える損失の方がはるかに大きいことは議論の余地がありません。長期的に見れば、人と地球のウェルビーイングに投資する企業は大きく成長し、レジリエンスを向上させ、高い業績を実現します。

完璧な企業などは存在せず、それは私たちも同じです。中堅企業である私たちが発揮できるのは、中規模の影響力に過ぎません。ただ、私たちの活動を飾らずありのまま伝えることで、「Human Powered Business」という事業モデルを普及し、より公平で豊かな、人を中心とした社会を目指す動きがさらに広がってほしい。それが当社の願いです。

ビジネスを「Force for Good」として活用していく

NBBはビジネスが「Force for Good」、つまり世の中を良くすることができると信じています。当社の社会貢献活動は単なる慈善事業ではありません。活動を通じて、私たちの事業を展開するコミュニティと関係を構築することが目的です。私たちは従業員やコミュニティがより有意義で充実して過ごせるよう、より人間らしいビジネスの在り方を模索しています。人間的なビジネスを運営し、このことに共感いただける人が増えることで、顧客ロイヤルティーが高まり、新規顧客の開拓や利益向上にもつながります。お客様と本当の意味でwin-winの関係を構築できるわけです。

こうした考えの根幹には、元ソーシャルワーカーであり、創業者兼元CEOであるキムの思いがあります。キムはビジネスの人間的な側面に大きな関心を寄せていました。最初の醸造所を設ける際に、工業エリアに“いかにも工場”といった施設を新設するのではなく、地域コミュニティのために街に隣接し老朽化した施設を美しく改修したのも、そうした思いの表れです。各地の醸造設備は街の中心部にあり、単なる工場ではなく、地域の人々の交流が生まれる「憩いの場」となっています。この結果、コミュニティを中心としたビジネスが育まれ、事業価値と社会価値の双方を創出しています。

プロフィール

Meghan Oleson

Social Impact Senior Manager
New Belgium Brewing Company
環境・社会・ガバナンス(ESG)チームに所属。地域社会への投資、ボランティア活動、企業や従業員の寄付プログラムなどNew Belgiumが目指す社会の実現に向けた活動のリーディングと実施を担当。

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

価値創造モデル

私たちキリングループは、新しい価値の創造を通じて社会課題を解決し、
「よろこびがつなぐ世界」を目指しています。

価値創造モデルは、キリングループの社会と価値を共創し持続的に成長するための仕組みであり、
持続的に循環することで事業成長と社会への価値提供が増幅していく構造を示しています。
この循環をより発展させ続けることで、お客様の幸せに貢献したいと考えています。