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非財務資本の強化
「本麒麟」のマーケティング変革

社内改革がもたらした成功

2018年に発売した「本麒麟」は計画を大きく上回り、発売初年度で累計出荷本数が3億本を突破するという、大変好調な販売数量を達成しました。この成功をもたらした大きな要因は、キリンビール株式会社社長の布施が先頭に立って「お客様のことを一番考える会社になる」という社内改革を強力に推進したことによるものです。

本麒麟

負のスパイラルに阻まれた適切な戦略

キリンビールは、新ジャンルカテゴリーのいわゆる麦系商品(リキュールに分類)を、およそ10年に亘って10ブランド以上発売しましたが、どのブランドも苦戦しました。シェア低下を食い止めようと、場当たり的な販促施策やブランド育成につながらない派生商品を発売するといった短期的な思考に陥っていました。さらには、自社商品内で競合することを恐れ、お客様が本当に求めている商品をお届けしきれていませんでした。その結果、お客様にとって価値の高いブランドを長期的な視点で育てることができずにいたのです。

絞りの効いたマーケティング戦略

こうした負のスパイラルから脱却するために、今回取り組んだ改革の大きな柱の一つが、「絞りの効いたマーケティング戦略」です。改革前は、ブランド数を減らすとトータルの販売数量も減少してしまうことを恐れて、とることのできなかった戦略です。この施策では、投資を行うブランド数を絞り込み、その分長期的に育成・強化するブランドを明確にし、集中的にかつ継続的に投資を行います。この方針に基づき、マーケティング部では単なるヒット商品を目指すのではなく、10年後も多くのお客様に愛されるブランドづくりを目標に掲げ、中長期的視点で戦略を描き、「お客様主語のマーケティング」を推進。その効果はまず、2017年に実施した主力商品「一番搾り」のリニューアルにあらわれました。

新戦略で実現した「本麒麟」の成功

そして「本麒麟」では、商品開発を行う際に、まずは過去の全商品を詳細に分析。その結果として得られた知見を、「本麒麟」の商品開発やマーケティングプランなどに落とし込んでいきました。従来は管理する商品が多かったため、ブランド戦略に基づく活動を各部署間で一貫して推進することは難しかったのですが、「本麒麟」では早い段階から営業現場とマーケティング部門が情報を共有し、戦略的な位置づけやブランド価値の理解、必要な販促施策・活動方針のすり合わせに時間をかけ徹底して取り組みました。これにより、お客様とブランドをつなぐさまざまな接点において一貫したマーケティングを行う組織体制が構築でき、初動だけでなく、その勢いを継続させることができたのです。

「本麒麟」販売数量(四半期ごと)

マーケティングを強みに

マーケティング部「本麒麟」担当の永井勝也は、「マーケティングで競合優位性が創出できるという自信を持っています」と語ります。キリンが元々持っていたモノづくりに対する技術や品質本位の姿勢と、外部から学んだ知見とノウハウを積極的に取り入れることで強化されたマーケティング部門が相乗効果を生み出し、お客様に高いブランド価値をお届けできる組織体制ができ上がってきました。これからも、デジタルやICTなど最新の技術を活用しながら、お客様理解をさらに深めていきます。
私たちは、このようにキリンビールで進化させている「お客様主語のマーケティング」をグループ会社にも拡げていくことで、さらなる組織能力の強化を図り、業界をリードするイノベーションを創出しています。

キリンビール株式会社
マーケティング部
本麒麟アシスタントブランドマネージャー
永井 勝也 Katsuya Nagai

PROFILE

2005年キリンビール入社。スーパーなど量販向け営業を経て、2011年マーケティング部に配属。のどごし〈生〉・氷結などのブランドマネージメント・商 品開発を担当後、本麒麟には商品コンセプト策定段階から携わり、2017年10月より現職。

非財務資本の強化最新ICTを活用した付加価値創出で
好調なブランドのさらなる成長を

注力ブランドの好調さを維持・向上させることで、さらなる成長を目指します。
そのために、ICT活用による付加価値創出を進めています。

営業現場におけるAI導入

お客様に、より満足していただけるよう、最新テクノロジーの活用を進めています。2018年にはAIを使った営業支援ツールを導入し、立地や客層に応じた量販店売場を実現する取り組みを開始。営業担当の作業時間短縮にもつながると期待しています。

デジタルマーケティング

お客様とのダイレクトな接点から、お客様理解をより進め、マーケティング施策に反映させる取り組みを深化させていきます。さらには、SNSやECチャネルなど、自社ソースに加えて異なる領域のデータベースとのマッチングを進め、データマネージメント基盤を強化し、お客様の潜在ニーズを把握する仕組みを進化させていきます。