キリングループは、お客様が家族や仲間と楽しく過ごす機会を提供するとともに、サプライ チェーンに関わるコミュニティの発展に貢献することを大きな事業目的の1つとしています。日本国内のホップやブドウ、ミャンマーの醸造米、スリランカの紅茶など、商品の原材料生産における持続可能性を強化する取り組みの中で、さまざまな地域のサプライヤーが抱える課題の解決につながる活動を推進。さらなる経済価値の創出と新たな社会価値の創出を目指しています。
そうした活動の一例として、ブドウ生産地と協働で日本ワインのブランド強化を進めるメルシャンの事例を紹介します。
近年、日本人のワイン消費量は増加傾向にありますが、日本ワイン※のシェアは5%にとどまっています。そうした中、当社は2027年までに「シャトー・メルシャン」を中心とする日本ワインの販売数量を、現在の約1.5倍の6.7万ケースに拡大する目標を掲げています。この目標の達成に向けては“お客様が誇りをもって日本ワインを飲む日常”を醸成することが重要であり、それこそが私たちの存在意義だと考えています。
従来から「シャトー・メルシャン」は国際的なワインコンクールで品質に高い評価を得てきました。しかし、市場の中で価格も含めて総合的に「価値の高いワイン」として選ばれるためには、「質」の向上とともに「量」の拡大が必要です。そのため、現在は50haの自社管理ブドウ畑を2027年までに76haまで拡大して収穫量を倍増させつつ、ワインづくりに必要な人材も育成していきます。
私は、ワイン事業は農業であり、ブランド産地で育まれるという考えから、ブドウ産地に隣接した「3つのワイナリー構想」を進めています。山梨県甲州市にはブランドの“玄関口”となる「勝沼ワイナリー」を、長野県塩尻市には一般公開を年10日間程度としたプレミア性の高い「桔梗ヶ原ワイナリー」を展開しています。
そして、第3のワイナリーとして2019年秋に開設するのが、長野県上田市の「椀(まりこ)ワイナリー」です。面積は、自社管理畑では最大規模の29ha。360度がブドウ畑に囲まれた一番の高台に建物を設置することで、ブドウ栽培からワイン醸造までを見学できる“ブティックワイナリー(下部コラム参照)”となります。
ただし、当社のみで運営していくことは難しいため、「地域との共生」を椀子ワイナリーのテーマとしています。地元のシルバー人材センターを通じて畑仕事を手伝っていただく方を雇用している他、子どもたちへの農業体験機会の提供、将来的にはワイナリーを開放したお祭りの開催なども構想しています。3つのワイナリーを展開することは、ビギナーの方にもコアなファンの方にも他にない体験価値と高い満足を提供することになりますし、ワイナリーの発展は地域の活性化につながるものと考えています。
ブティックワイナリーとは、手摘みのブドウを使って高品質のワインをつくる比較的小規模なワイナリーのことです。2019年秋にオープンする椀子ワイナリーは、「産業・経済との共生」「自然との共生」「未来との共生」をコンセプトとした“地域と共生するブティックワイナリー”です。ここでは、ブドウ栽培から醸造までワインづくりのすべてを公開するとともに、ワイナリーの2階には抜群の眺望のテラス席を用意するなど、貴重な体験を提供する予定です。
椀子ワイナリー外観イメージ
椀子ワイナリー内部イメージ
ワイナリーでお客様に満足体験を提供して商品をお買い求めいただき、ご家庭や友人とワインを傾けて楽しんでいただく。その思い出とともにリピーターとしてまたワイナリーにお越しいただく。さらに充実したコンテンツの自社サイトを通じてお買い求めいただき、ワインファンを着実に増やしていく。そうした海外ワイナリーの成功事例を取り入れ、ワインの直接販売比率を20%まで引き上げ、利益率も向上させていく計画です。
また、海外市場へ「シャトー・メルシャン」の輸出を開始しました。香港では三ツ星レストランでの提供が決まり、今後はロンドンやニューヨークなどでも「価値の高いワイン」として認知を得ることを目指しています。私たちは、こうした取り組みを継続し、「シャトー・メルシャン」を日本を代表するブランド、世界から評価されるブランドに育成していきます。
メルシャン株式会社
マーケティング部
シャトー・メルシャン
チーフ・ブランドマネージャー
神藤 亜矢
Aya Jindo
1996年、メルシャン(株)入社。英国留学でワインビジネスとマーケティングを学び、輸入ワインのブランドマネージャーを10年間務める。2014年、キリンビール(株)に移籍し、クラフトビールやシードルの商品開発を経験。
2017年からメルシャン(株)に復帰し、自身が立案した「3つのワイナリー構想」を推進中。