キリングループにとっても重要な課題の1つである地球温暖化については、2009年に「グローバルグループのバリューチェーン全体のCO2排出量を、2050年までに1990年比で半減する」という高い目標を設定して取り組みを進めてきました。
さらに、2017年3月には、企業活動などで直接排出するGHG(温室効果ガス)およびバリューチェーンで排出されるGHGを、2030年までにそれぞれ2015年比30%削減するという中期削減目標※2を設定し、事業を通じて取り組みを始めています。今回は、キリンビールが意欲的に取り組む、世界で最もGHG排出量の少ない生産システム※3について紹介します。
キリンビールでは、世界のビール業界をリードする技術力と数々の先進的な施策によって、1990年~2015年までの25年間でGHG排出量を約70%も減らしてきました。さらに、現在当社はキリングループが2017年に策定したGHG排出量削減目標の達成に向けて、一層の技術革新に挑戦しています。
この解決策として、私たちが目指しているのが「化石燃料から電力へのエネルギーシフト」です。現在、ビール工場ではエネルギー源として「電力」と「化石燃料」を使用しています。このうち、GHGの排出源の大部分は「化石燃料」、つまり加熱に使うエネルギーです。このような状況で、GHGを削減するためには、エネルギー効率を高めてその使用量を減らし、さらにエネルギーミックスを「電力」にシフトし、その上で再生可能エネルギーでつくられた電力を活用することが最も効果的と考えています。
GHG削減の鍵となる技術が「ヒートポンプ」です。ヒートポンプ・システムを導入することで、省エネルギーと電化を両立させることができます。しかし、単純な設備の導入で成果を生むことはできません。導入の前段で製造プロセスにおけるすべての熱の流れを解析し、最適化する高度な設計が不可欠です。キリングループには高いエンジニアリング技術が蓄積されており、私のチームではその経験を活用して世界で最もGHG排出量の少ない生産システムの実現を目指しています。この取り組みにより2030年以前にGHG排出量削減目標を達成できる見込みで、同時に年間10億円規模のエネルギーコストの削減が達成可能となります。
2019年から岡山工場をモデルとして段階的にエネルギーシステムを再構築し、さらに同工場での成果を見ながら国内外のすべての工場へ展開する方針です。
世界最高水準のエネルギーシステムの実現に向けて、当社は技術力を強みに挑戦を続けていきます。
キリンビール株式会社
生産本部・技術部
生産技術開発担当 主務
吉川 創祐
Sosuke Yoshikawa
2005年、キリンビール(株)入社。2007年のキリンビール滋賀工場リニューアルにおいて、エネルギーシステム全般を担当。その後、本社でエンジニアリング業務に従事し、2014年にブラジルに赴任。現地ビール・飲料会社の工場建設や省エネルギー施策の立案を担当し、大幅な省エネルギー化を達成。現在は環境・エネルギー技術を統括している他、GHG排出量削減戦略の策定・推進も担う。